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転がる運命
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「…なにかご用ですか、部長」
店を出て、少し人通りが少ない小道で足を止めてふりかえると司先輩はなんだか泣きそうな顔をしていた。
そんな顔をさせているのはまちがいなくこの俺だというのに、少し悲しかった。
あたりまえだ。
俺だってこんな俺みたいなヤツと絶対に2人きりになるなんて御免だし、先輩にとって恐怖のかたまりでしかない俺だ。
そんな顔されて当然といえば当然。
だけど、ただただ悲しくて、目を伏せた。
言いわけかもしれないけれど、ホントはあなたに俺のことを見てほしかっただけだったんだよ……
そんな言葉を飲み込んで俺は答えた。
「先輩、僕のこと覚えてるんでしょう?
いいかげんしらばっくれてないでくださいよ」
「なんのことですか」
「覚えてるんでしょう」
キッと睨まれる。
ああ久しぶりだな、なんて能天気にも思った。
初めて会ったときから俺は司先輩に睨まれっぱなしだった。
特に司先輩はそのときから俺よりも小さくて顔は笑っているのに身体じゅうから『近づくんじゃねー!』ってオーラに溢れていた。
警戒心むき出しで青史先輩にぴったりくっつく司先輩を、かわいいと思った。
飼い主にしがみつくウサギみたい、って。
もふもふのウサギを思い浮かべては俺はいつもニヤニヤしていた。
今は…そうだな。
ウサギが少し太ったみたいな?
中身かわってなくて臆病なのに、一生懸命積極的にまわりに関わろうとしてる…みたいな?
ふふ、やっぱりかわいい。
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