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襲来
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その澄んだつぶらな水色の瞳が俺を見下ろしていた。
その俺の肩幅ほどもある虎は明らかな敵意をもって俺を睨みつけている。
したたり落ちるだ液がダラダラと床に斑点を描いていた。
あまりに現実離れした光景に俺は見とれた。
だけど、背中と足首のはげしい痛みのおかげでこれが現実だということの何よりの証拠だ。
そう確信できたときにはもう俺の前から虎は消えていた。
ビリビリと背中に殺気を感じ、俺は足を引きずりながら腕の力だけで必死で後退した。
振り返ると虎はまっすぐに俺を睨みつけていた。
「グオオオォオオ!!」
来る!
俺は本能に近い何かを確信して、足首の痛みも構わず立ち上がった。
「ああ!」
ズキッズキッと言い知れぬ痛みが走り抜け、俺は死に物狂いで走り出した。
迫り来る恐怖に支配されていたせいで、自分の体を気づかう余裕はまったくない。
場所が場所なので、隠れるところも逃げるところもまったくといっていいほどない。
虎は俺が動き出したのを見るとやはりベッドから飛び降りて襲いかかってきた。
「来るな! 来るな! …ぁあ!」
なんとかその鋭いカマみたいなツメが直撃するのを避けたが、むちゃくちゃに振り回した腕から服を貫通し血が出た。
また身体のバランスを崩し、ハートの形をしたテーブルに背中を強打した。
「あぁ!!」
しばらく忘れていた背中の痛みがさっきよりも強く感じ、俺はミシミシと音を立てるテーブルの上で悶えた。
だけど、虎はめざとくそれに気づき、再びその大きな牙で今度は俺の肩口に嚙みつこうと踊り込む。
何がなんだか分からないままその顔を渾身の力で蹴り飛ばした。
「グァォッ!」
効いた…みたいだ。
俺は壁に一旦身体をあずけ、血が出ている腕を反対の手で押さえた。
だが休むのもつかの間、虎は縮み上がってしまうようなさらなる憤怒の表情をこちらに向ける。
「グァォグオオオォオオ!!!」
白銀の体躯がゆらりと揺らめいた。
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