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お調子者が馬鹿を見る~高尾君の受難~(宮高)
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「うっわ、すっげぇ」
案内された扉をくぐると、そこには異様な光景が広がっていた。
壁いっぱいに貼られた美少女達のポスター。棚には沢山のグッズやDVD、CD(全てアイドルのライブモノ)、雑誌ナドがきちんと整理して置かれている。
「……これ、全部宮地さんが集めたんっすか?」
「もちろんだ。壊したり破いたりしたら絶対轢くからな!」
「……」
にっこりと笑顔で言われ、高尾は頬を引きつらせた。
彼がアイドルオタクなのは理解していたが、まさかこれ程とは。
(轢かれる前に、俺、引いてるっつーの!)
緑間の変人っぷりで変な奴には馴れてしまったと思っていたのに、美少女に囲まれたこの部屋を見たら、さらに上がいたと思わざるを得ない。
「宮地さんってカッコイイのに、絶対にコレで人生損してますよね」
「あぁ!? なんか言ったか?」
「なんも言ってませーん」
鋭い視線で睨まれて高尾は肩を竦めた。
その時、ふと机の上にある黒い物体に目が止まる。
「なんっすか、これ?」
近づいて見てみると、それは黒い猫耳カチューシャだった。
「それは、みゆみゆがプロモの時に使用していたカチューシャだ。この間ネットオークションで落とした」
みゆみゆというのは今、巷を賑わせているアイドルグループ一人の名前だ。よくよく部屋を見渡せば、沢山貼ってあるポスターのその全てに彼女がいる。
「あ、そのプロモなら俺も見たことあるっすよ。猫耳付けた女の子達が歌いながらキスしたりしてるアレっすよね?」
「そう! それだ! あの時のみゆみゆは最高に可愛かった!」
「へぇ~」
アイドルにさほど興味も魅力も感じない高尾には宮地の感覚がさっぱりわからない。
「つか、コレ本物なんすか?」
寧ろ、そっちのほうが気になってしまう。プロモーションビデオで使用するような代物がネットオークションに流れていたという時点で、自分ならまず偽物ではないかと疑って買わない選択をするだろう。だが、宮地はそんなこと微塵も考えていないようだ。
「当然だ! ちゃんと証明書もついているからな! 間違いない」
自信たっぷりに宮地は机の引き出しから一枚の紙を取り出した。
そこには確かに本人のサインらしきものと、内容証明のような文章が書かれている。
(でも、これってPCに詳しい奴だったら普通に偽造出来そうじゃね?)
口には出さなかったが、本気でそう思った。素人目で見ても、そう思わせるくらい胡散臭さが滲み出ている。
「ちなみに、いくらで買ったか聞いても?」
「あぁ! 1万で即決だった」
「1万!? カチューシャに1万も払ったんっすか!?」
こんなものに1万も出すなんて信じられない。
ふわふわとしたカチューシャをジッと見つめる。
触り心地は良さそうだが、とてもそんな価値があるようにはみえない。
「宮地さん、コレ、付けてみてもいいっすか?」
「なっ!? ダメだ馬鹿っ止めろっ!」
「えっ、ちょっ!? そんな引っ張ったら――っ」
ほんの冗談のつもりだった。頭にセットするより早く、宮地に腕を勢いよく掴まれて体勢が崩れる。
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