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「お互い様だろ。じゃあな」
これ以上向こうには関わりたくねぇ
左手をあげてその横を通り過ぎようとしたとき、
パシッ……
その挙げた手を即座にとられた。
「……何の真似だ」
「…怒っているか?リコールのこと」
何を言い出すかと思えば
俺はハッと鼻で笑って東の顔に目を向けた。
「今更何言ってんだ。全部終わったことだろう?もうその話をする必要はねぇ」
「……そ、うだな。」
東はそっと手を離して、気まずそうに俯いた。
……なんだこいつ
俺の知ってる東とはずいぶんかけ離れている。
俺様だと言われていた俺に負けないぐらい強気で他人には決して弱さを見せないヤツ。
嫌味ったらしい言葉遣いで目が合えば所構わず突っかかってきていた。
そんなヤツが一体どうしたっていうんだ。
「……なんだ、何か言いたいことでもあるのか」
「……片桐はそうだったな」
「は?」
「お前は自己中で無茶苦茶でくそ腹立つヤツだったけど、なんだかんだで他人の言葉に耳を傾けていた」
突拍子もないことを言い出し、東は苦笑を漏らした。
「なぁ、片桐……」
「あ?」
東はゆっくり顔を上げた。
そこにはやっぱりいつもの威厳が全く感じられない。
俺はただその口が動くのを見ていた。
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