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あの家で俺に権利はなかった。
ただ与えられたものだけを頼りに生きていた。
人は結局一人だ。
くだらねぇんだよ…家族も仲間も
何もかも……
「本当に……くだらねぇ」
空いていた左を強く握りしめ、シーツに思い切り振り下ろした。
まだ通話は切れていない。
気まずい空気が流れる。
それを断ち切ったのは兄だった。
『……父がどうするつもりかと』
「はっ…結局はそれだろ?要件はさ。家の力を借りるつもりはねぇ。どうせ退学になって帰って来られるよりはマシだとでも思ってんだろ?」
『っ!!そんなわけ…っ…』
「兄さんが思ってなくてもあいつがそう考えてるのはまるわかりだっての。……だから、伝えてください。俺は自分の力で這い上がります。今後一切の援助はいりません」
その声は自分でも引くくらい冷たいものだった。
電話の向こうで兄が息を呑むのがわかる。
「……それでは、お元気で」
『!?じ、仁!待ってくれーー……』
兄の言葉の途中で通話を切った。
そのままケータイの電源も落とし、ベッドの下に放り投げた。
「チッ……胸糞悪りぃ……」
イライラする
どうして人間はこうも勝手なんだ。
面倒だ……
関わるだけ無駄
……一人でいるほうが楽でいい
信じることをやめれば裏切られることもない
期待しなければ絶望もない
何も求めなければ無駄な喪失もない
そうやって生きてきた
そんな生き方しか知らない
でも、それが一番正しいんだ。
そう信じるしか他の生き方を俺は…本当に知らねぇんだよ
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