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その距離が再びゼロになる直前
鼻がつきそうなその距離で玖川は動きを止めた。
「ほらな、お前はそうやってすぐに流される。簡単に捕まってやがる」
「……っ…」
微かに鼻をかすめるのは柑橘系の香水の匂い
玖川には似合わない
でもどこか落ち着く香りだ。
「でも、……こんなの初めてだ」
言葉さえ失ってただ固まる俺に囁き、ゆっくりと距離をとった。
玖川が遠くなるほどだんだんと冷静になっていく。
「ここまで本当の意味で手に入れるのが難しいものは……」
「………」
玖川は俺に小さく笑い、立ち上がった。
「…でも、だからこそさらに欲しい」
「…なに、言ってんだ」
ようやく発した言葉は弱々しくなんとも情けない。
「前も言ったが、俺はお前が気に入った。……お前を俺のものにする」
「……は?」
「だから、それまで誰にも喰われんなよ」
そう言って玖川は手を伸ばして俺の頭を掴んだ。
「やめろ…っ!」
その腕を掴んで下ろす。
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