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ヒサナの憂鬱4
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アズサ教授が好きだ。おそらく今まで築いた関係の中で最も深い感情だ。
けれど、言えない。絶対。誰にも。どんな奴に抱かれても必ず夢にはアズサ教授が出てきて、あの細くて長い指で俺の頬に触れながら長い長いキスをしてくれる。そこからは、全てが教授の思いのままに自分の体がビクリビクリと反応しその快感に身を委ねているだけでいい。
目が覚めたら、ただただ、底知れない寂しさを、胸全体に受けなながら、朝の生理現象にため息をつく。
どんな奴に抱かれても夢に出てくるのはアズサ教授だけなのに。
自分自身がこんなに、純情だとは思わなかった。研究一筋で、私生活がおざなりで、何より大学研究が第一優先なはずなのに、俺を弟だと言ってくれた。世界中で誰よりも両親の死を悲しんで、俺に将来の希望をくれた人。
帰る家は、アズサ教授と住んでいた部屋が本で埋め尽くされて、年中ソファと机が見当たらないあの、小さな借家だけだ。
物想いから覚めても、この激情が表に出ることもなく、先ほどと変わらず、教授が俺の横に座り、紅茶とケーキに口をつけている。
「うん?なんか私の顔についてるかな?」
そう言ってアズサ教授は慌てたように口元を拭い始めた。そんな動作一つが愛おしい。
「あー。大丈夫です。ただ俺がぼーっとしているだけですから」
自然に笑えて、俺が好きな者の側にいられるなら、いっそこのまま時間を誰か止めてくれないだろうか?
この窓が一つしかない部屋からは太陽の光がカーテン越しから優しく入ってくる。午後の束の間の俺の休息。
「あ、あとね。今日呼んだのは、藍澤君に言わなきゃいけない事があったからなんだ」
それに一抹の不安を感じる。あとは背中から嫌な寒気が体全体を回り始めていた。
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