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米を研ぎ終え外へ出て玄関まで歩いた。途中で割烹着を着た人とすれ違う。食堂の松下のおばちゃんだ。入学して間もない頃俺が料理の隠し味を当てたことから大層気に入ってもらっている。
「あら、孝弘君、早いわね、なにか食べたいものでもあったの?」
朝から元気なおばちゃんはけらけらと笑っている。
「鯖の炊き込みご飯が食べたくなって」
「じゃぁ、今日は食べに来てくれないのねぇ」
「あ、夜飯は絶対」
「じゃぁその時に炊き込みご飯食べさせて頂戴ね」
「うぃっす」
俺は今日のように衝動的に何かを食べたくなることが多い。頭の中に突然メニューが浮かぶのだ。
それが浮べばそれ以外のものを食べてもどこか満足しないし一日の集中力は半減してしまう。いいとこなしだ。
ここの食堂の制度で一食分抜かせばその分の食費は請求されないことになっているからお財布にも悪くない。
あー鯖が俺を待っている。魚の旨みが出てきっとうまいに違いない。秋だったら秋刀魚でも旨いだろうな。
今は五月だが時間のせいか肌寒い。上着を羽織ってくればよかった。うすいVネック1枚はつらい。
スーパーまでは徒歩五分程度だ。
店内に入るとほのかに暖かく、そして静かだった。まぁこの時間なのだから当たり前だろう。
そんなことを考えながらかごも持たずに缶詰コーナーまで歩く。
規則正しく陳列された商品たち。その中から目当てのものを探し出す。
あった!!残り一つだ。なんて俺は運がいいんだろう。正直欲を言えば二つ三つ入れたかったのだがしょうがない。最後の一つに巡り会えたことに感謝しなきゃな。
そう思いながら、手を伸ばした瞬間だった。
俺の目の前から缶詰が消えた。
否、他の奴に取られたのだ。
なんてこった!!叫びたい衝動を抑え。俺の鯖缶を奪った奴の顔を拝む。
「…………」
そこには不審者がいた。
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