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男は綺麗な箸使いでほうれん草のおひたしを口に入れ咀嚼した。
何を言われるのだろう。育ちがいいであろうこいつのことだ。いろいろと暴言を吐くかもしれない。頭の中で考えて身構える。
男が静かに箸をおいた。
「……おかわり」
「は?」
「この炊き込みご飯もっと食べたいんだ」
罵詈雑言が飛んでくると身構えていたため拍子抜けだ。
ジャーを開ける。
しまった。
あと茶碗一杯分しかない。もともと自分ひとりで食べる予定だったのだからしょうがない。
おばちゃんにもあげるって約束したしな。
コイツには悪いけど。振り返ることなく悪いと、声を出した。するとちょうどそれを遮るように男の声も聞こえた。
「君の作った料理ってとっても温かいね」
しゃもじを落としそうになったのを堪え振り向く。
唇はゆるく弧を描いている。目はやはりサングラスで見えなかったけれどきっと優しい色をしているのだろうなと思った。
「出来立てなんだから、当たり前だろう」
言い訳のようなそれは俺の意思を完治する前に反射のように滑り出た。
男は緩く首を振る。
「そういう温かさじゃないんだ。すごくほっとしたよ」
短いその言葉が胸に残る。すぐには理解できずじわりと広がっていく。
そんなことを言われたのは初めてでむず痒い何かを押し込めるように俺は残りの炊き込みご飯をおにぎりにして男の前に置いた。
「ほらよ」
「ありがとう」
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