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もう俺は食事を終えていたので男が食べ終わるをの肘をついて見ていた。
形のいい唇から白い歯が覗く。ふと目線を移すとブロンドの髪が太陽の光で輝いて見えた。
綺麗だ
ただただそう思った。
その中で茶色いおにぎりと真っ黒なサングラスだけが男を不自然に彩っていた。
だがそれでも、やはり目の前の風景はまるで1枚の絵画のように俺の目には写ったのだった。
『おはようございます。7時です。今日の天気は晴れ。暖かな陽の光がみなさんを包んでくれるでしょう。そして今日は―――』
突然割って入った放送に我に返る。
この放送は毎日放送委員が交代で読み上げるものだ。朝が苦手なものには辛いだろう。
たまにいかにも寝起きですという声で読む放送委員もいる。
しかし今日は流れるような綺麗な声、聞き取りやすいスピード、聞いていて心地よい。
そういや誰かが明日は七時より前に起きなければと言っていた。このせいか。
「綺麗な声だよね」
「確かにな。あれだろ委員長の田村サンだっけ」
田村悠。放送委員長で高校一年の時は全国の放送コンテストで優勝したとか。
詳しいことはわからない俺でさえ上手いと思うのだから相当なものなのだろう。
学園内にはファンが沢山いるらしい。俺は良く知らないが容姿も整っているそうだ。
「さて、とそろそろお暇しようかな」
ごちそうさまでしたを箸をおいた男は立ち上がると玄関まで歩いていった。一応見送りに行こうとすると戻ってきた。またフードとマスクもつけ、靴を持っている。忘れ物だろうか。
そう思っていると男はそのまま部屋を突っ切ってベランダへ続く扉を開けた。
「おい、そっちは玄関じゃ―――」
「またね、筒井孝弘くん。美味しかったよ」
は?と思った次の瞬間男の姿が消えた。
慌てて駆け寄ると男が道路を歩いている所だった。
ここ一階とはいえ一応地面から5mは離れてるんだが……。
しかも俺の名前を知ってたし……あいつ誰だよ。何で?
思考停止。考えてもわからない。やめだ。
がらりと窓を閉める。片付けをしなきゃいけない。
すべての食器を洗い場に運ぶ。
「あ、」
おばちゃんの分、忘れてた。
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