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「孝弘今日は早いな」
確かに今日はいつもより早く家を出た。
そこにはちゃんと理由がある。
「早く行けば変なのに絡まれないから無駄に喧嘩しねぇで済むって気づいた」
「なるほどなぁ、大変だなお前も」
「最初は優等生で行こうと思ってたのに最悪だよ」
入学当前は喧嘩もせず静かに生きていこうと思っていたのだ。
にも変わらず入学式のその日の高3に絡まれて殴り飛ばしてしまったのだ。
「何だっけ、尻触られたんだっけか?」
「そうだよ、気持ち悪い」
思い出しただけでも吐き気がする。
ワンタッチぐらいなら俺も怒ったりしない。
だがそいつは鷲掴みにしたどころか、揉みしだいてきやがった!!
マジでありえない。トラウマもんだ。
「お前明と同じ目にあってんなぁ……」
くすりと村岡さんが笑った。
「は、親父も?」
「おー、アイツはモテモテだったからなぁ」
「……なるほどね」
ここ、東原学園は前にも言った通り男子校だ。しかも山の上にあるため外に出るのも一苦労。
だから皆日々の鬱憤が溜まっている。主に性的な方面で。
男も女もいけるやつは沢山いるみたいだし、男しかダメな奴もいるそうだ。
だからカップルだっている。入学当初こそ驚いたが俺の近くにもそういう奴がいるので早々に慣れてしまった。
男の中でも高身長な父はさぞかしモテたことだろう。
村岡サンの話ではそれに加え文武両道、性格も良かったそうだ。そりゃモテるよな。
「孝弘もせめて身長くらいアイツに似たらなぁ……」
「またそうやって俺のこと馬鹿にしやがって!!!!」
身長は禁句だ。ダメ絶対。
中3の四月の身体計測と今年ので2センチしか伸びてなかったとか俺は知らないぞ。
成長期の高校生とかそんなこと言わないでくれ。
村岡サンは楽しそうに笑っている。
彼とは父のおかげか随分と仲良くなった。俺も敬語もどきは使わないし飯のおすそわけもしている。
「あ、料理。料理なら親父にも勝ってるだろ?」
「本当だな。アイツのは壊滅的だったからな……」
思い出したくないと村岡サンが顔を顰める。
何でもできる親父は料理だけはできなかった。
俺にも苦い記憶がある。母が出張でいなかったとき、親父はカレーを作ると意気込んでいた。
俺の好物はカレーでドッキドキワックワクでその時を待ちわびていたんだ。
だが、親父が俺の前に差し出したのは紫色のゼリー状の何かだった。悲しいことにカレーの匂いはしていた。
どうしてカレーの匂いだけしたんだ。そこだけならカレーの匂いもいらない。
見ただけで俺は縮上がって待って無理だ無理だと泣きわめいた。
あの時の親父、凄く困った顔をしていたなぁ……。
その後帰ってきた母にキッチンに入っちゃダメって言ったでしょうと怒られていた。
その時だけは母の方が親父より大きく見えた。
「アイツの料理はなんていうかグロいよな……」
「分かる……」
こんな悲しい記憶を共有することになるとは思わなかった。親父の料理恐るべし。
「おい、孝弘そろそろ他に奴も来るぞ」
「マジ?行ってきます!!」
「おー、行ってらっしゃい」
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