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まず普通のが出来上がった。
端を切り落とし、菜箸で摘まみ口に運ぶ。
すごく俺好みの味付けだ。だがやっぱり物足りない。
今日俺が食べたいのはやはりネギ入りのようだ。
菜箸で反対側の端を摘む。
「おい、」
それを男の方へ向けてやる。男は一瞬固まったが意図を理解したのか口へ入れた。
数秒咀嚼して飲み込んだ。男が口を開く。
「やっぱり美味しいね」
カチリ、音がして自分の箸を持つ手に力が入っていたことに気付く。
きっと男の感想を待っていた。賞賛の言葉がむず痒い。けれど不快感はまるでない。男の言葉で俺の心もじわりと温かくなる。
「……お前は、甘いのと辛いのどっちがいいんだ」
気づけばそう聞いていた。
男はそうだねぇ……と言う。考えているようだった。
「うーん、だし巻きが好きだな」
ああでも、と付け加える。
「でもさっきので甘い方が好きのなったかも」
ふわ、と男がやわらかい空気を纏う。まだ見ないサングラスの奥の瞳と目が合った気がした。
何故か気恥ずかしくなって男から視線を逸らした。
気を取り直して卵焼きを作ろう。
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