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「どうしたの? 濡れちゃうよ」
優しい声で語りかけてくる男に言葉を返す余裕はない。
離れた代わりに服を強く掴んだ。男の苦笑が聞こえる。
「停電が怖かった?」
ふる、と首を振る。
「雷?」
こくり、と頷く。
少し間が空いた後男の手が俺の耳をふさいだ。
そんなことしても音は普通に聞こえるのだけれど何だかほっとした。
「こわかっ……ひとりで…………かみ、なりと雨が」
気づけば喋り出していた。
「おまえ、もこないかと…………みんな、いなくなっちゃ……」
ぽろ、と目から涙が溢れた。溢れだしたら止まらない。ぽろぽろと床に水たまりを作る。
「やくそくした、のに……」
「帰ってくるって、おれが、おれがいい子にしてなかった、から?」
男の手が耳から離れる。
どっかに行ってしまう!!
「いか、行かないで、おれっ―――」
ぎゅ、と俺が男の服を握ると同時に男が俺を抱き寄せた。
ぎゅう、と痛いくらい抱かれる。
「大丈夫。俺はここにいる」
大きな手が背中をさする。
「聞こえる? 俺の心臓の音。ここにいるから。君から離れたりしない」
押しつけられた胸からとくとくと男の心音が聞こえる。
こいつはここにいるんだ。こみ上げてくるものを抑えられない。
「いなくならないで。俺、いい子にするからっ」
「君はもう充分いい子だよ。だから泣かないで」
「本当?」
「うん、ほんとだよ」
背中をさすっていた手が頭にきて髪をすいた。気持ちいい。
とくとくと規則正しいリズムが心地よくて離れられない。
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