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いつもの通り食後の茶を出す。最近はこいつがどちらを飲みたいか何となく分かるようになってきた。
今日は緑茶の日だ。男が何も言わずに受け取れば正解。
黙ってカップを受け取って口元を緩めたのを見てああ、正解だとほっとする。
……何で俺はこいつの飲みたい茶がどれか当ててほっとしてるんだ。
怒られるのが怖いわけでもあるまいし……
「雨、やまないね」
「そうだな」
雨は依然として降り続く。雷も時たま鳴る。
ふと、時計を見る。いつも男が帰る時間帯を1時間半も回っていた。
「そろそろ帰るか?」
傘なら貸すけど、と付け足す。
遠くで雷が聞こえたが不安を押し殺した。迷惑ばかりかけてられない。
「明日からまた、忙しくなるんだよね」
突然男が言った。意図がわからず首を傾げると男がふ、と笑う。
「だから、傘を返すのがすごく遅くなっちゃうと思うんだ、それにこの格好だし」
そう言われてピンと来る。もし間違っていたらとても恥ずかしいけど。
「泊まってくか?」
男の表情は読み取れない。もしかして違うだろうか。
「服もあるし、乾燥機使ってるからもうすぐ、乾く……けど」
どうする?
嫌だろうか。もしかして傘なんていつでもといえば良かったのか。失敗だ。
その時また雷が光り、鳴った。
近くに落ちたのか轟音に肩をすくめ目を瞑る。雨が弱くなってきていたからもう大丈夫だと思っていたのに、突然のことに反応してしまった。
心臓がばくばくと音を立てている。
「帰り道で落雷の被害にあっても怖いし、お言葉に甘えようか」
「っ本当か?」
出た声は上擦っていて期待しているようにも聞こえた。期待なんてしていない。確かに一人は怖いと思ったがよく考えれば昔はこうだったのだから平気なはずだ。
咳払いを一つして立ち上がった。洗い物でもしよう。
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