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side:??? おやすみ、君によいゆめを。
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規則正しい寝息が聞こえだした。サラサラの黒髪に口付ける。今日の彼は本当に可愛いく、痛々しかった。
知らない一面をたくさん知った。
本人は気づいていなかっただろうけど常に目に滲んでいた怯え。
彼の過去に辛いことがあったのは容易に想像できた。いつも哀の感情を見せない彼が見せたそれは彼をとても儚く見せた。
どこにも行かないで、一人にしないでと言ったのは君だったけれど、消えてしまいそうなのは君の方だ。
思っていたよりも体が華奢でより一層壊れそうで。
今日の彼はいつも見せない反応をたくさん見せてくれた。
可愛い声を上げたり頬を染めたり。恥ずかしさを噛み締めたような表情にはこちらの胸もきゅぅとしまった。
本当に可愛い。泣き顔さえも。
今日彼の元を訪れる約束をしていてよかった。こんな彼を一人にはできないし誰かに見せたくもない。
ふつ、とわいた独占欲に苦笑する。
このままずっとこの腕の中に閉じ込めていたい。嫌な事など思い出さないように。
このまま彼を胸に抱いたまま眠りたいと思っていたのに、チャイムが鳴った。何度も鳴る。
無視しようかと思ったけど、彼が折角眠ったのを起こしたくはない。
廊下に出る。丁度乾燥機が仕事を終えていたので服を着る。
インターフォンを操作すると見知った顔がそこにいて驚いた。こっちに来てから会うのは1年ぶりだ。何故ここに?
「あれ、部屋間違えたかな?」
いやまさかとか言っているのが面白い。
「合ってるよ」
「何でいるの?」
「一緒にご飯を食べたから」
「そう」
彼は納得したようなしてないようなそんな表情で返事を寄越した。何そのサングラスと聞かれ身バレ防止笑ってみせた。
そっちは? と聞く。
「友人だよ。停電にもなったし心配だったんだ」
友人ねぇ。目の前の俺によく似た彼はそう言ってるいるけれど本当かどうかわからない。だって俺達はよく似ているから。
にしても久しぶりだ。顔色もいい。
「元気そうで良かった」
彼はゆるりと笑いありがとうと返してくれた。
「寝てるんだったら帰るけど変な事しないでね」
笑みのために細められた目が鋭く俺を射抜いた。う~ん怖い。はは、と曖昧に笑っておく。
じゃ、と踵を返してさっていく背中を確認して施錠。
寝室へUターンだ。起こさないようにベッドに潜り込む……黒目がちな目がこっちを見ていた。眠そうに揺れている。
「……だれか、きてた?」
「誰も来てないよ。起こしちゃってごめんね」
「あ、そ……」
そう言うと彼の瞼が閉じられる。
おやすみ、どうかいい夢を見て。
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