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終業式まで。1日目。
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「あれ、三木は?」
「三木、今日から彼氏と一緒に飯食うって」
つまり宮原と二人きりだ。昨日の今日でこれは気恥ずかしい。だが宮原はそんなこと無さそうだ。
また、俺だけか。
「筒井、何かあったの?」
「お前が昨日、変なことするから……」
じと、と睨みつけてやる。事あるごとに耳やら顔やら触ってきて、本当に死ぬかと思った。あれは本当にやめて欲しい。力が抜ける。
「ごめんごめん、でも筒井も余計な喧嘩したくないでしょ?」
あれ、そっちか……
宮原と俺が思ったことは違ったみたいだ。まぁ、どちらも恥ずかしかったからいいんだけども。
その後昼休みは何事もなく過ごした。
けれど、三木は5限に入っても帰ってこなかった。あいつが授業をサボるなんて珍しい、というか初めてじゃないだろうか。
あいつは授業で寝てもサボリはしないのに……。
結局三木が返ってきたのは終ホームが終わってからだった。
頬と目もとが赤い。目も潤んでいるように見える。どうしたのだろう。
「あ、筒井じゃん」
そう言った声は掠れていて疲労が滲んでいた。
「お前何やってたんだよ」
「んー、内緒」
ふわ、と笑った。だんだん熱くなってきているのに相変わらずパーカーを脱ぐ様子はない。
「あ、三木、虫にさされてるぞ」
首のところを指さしてやると三木は緩慢な動作で首筋に触れ、ふ、と笑った。
今までに見たことのない笑みだった。嬉しそうな、それでいて悲しそうなそんな笑み。
ただ一つ言うとしたらその笑みはとても美しかった。
「お前、何かあるんなら言えよ」
そう言うと首を傾げる。
「何かって? 特に言うことないよ」
そうは見えないから聞いているのに。唇を噛む。
どうしてそんなに疲れているんだとか聞きたいことは沢山あるがきっとこいつは秘密か何でもないでやり過ごす、そんな気がした。
けれど、明らかに普段と様子が違うのにそれを放って置けない。
「おま――」
「先輩」
三木が遮るように言った。
「待ってるから」
そう言うと俺から視線をふ、と逸らして出口へ向かう。
「お前、変な事されてないよな?」
背中に問いかける。なぁ、いつもより小さく見えるのは気のせいか?
「何でそう思うんだ? 俺達愛し合ってるだけだぜ」
その声は随分乾いているように聞こえた。なあ、お前今どんな表情してるんだよ。自分の声に気づいてるのか。
「じゃぁ、またな筒井」
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