アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
終業式まで。7日目。
-
「筒井、先輩が待ってるって……!!」
「いいから」
言い募る三木を無理やり引きずって寮まで連れていく。三木は先輩が、先輩が、としきりに繰り返している。
「お前も彼氏もずっとお前といなきゃ死んじまうのか?」
そう言うとわずかに押し黙って抵抗の力が微かに弱まった。
「お前の家庭事情は知らねーけど、お前が学校辞めるなんて俺嫌だからな」
「…………」
また少し弱くなる。
そんなことを繰り返して寮にたどり着いた。エントランスにはワオキツネザルのTシャツを着た村岡サンがいて目線だけでついて来いと俺たちに告げる。
村岡サンをみた三木の抵抗がまた強くなったが俺の方が力は強い為そのまま引きずった。
村岡サンが通してくれたのは普段は寮監以外立ち入り禁止の部屋だった。
長机と椅子、ポットと物は少ない。
三木を座らせると村岡サンも向かいに座った。
ぎし、とパイプ椅子が音を立てる。
「三木君」
村岡サンが声をかけるとふい、と視線を逸らす。
「孝弘も俺も君が心配だ」
「……心配されるようなこと無いですけど」
「彼氏には大事にしてもらってる?」
「……当たり前じゃないですか」
小さく息をついた三木はそれだけですか? と呟いた。
「俺は三木君が暴力を振るわれてるんじゃないかと思ってる」
村岡サンの言葉に三木は目を見開いた。
俺も気づけば拳を握り締めていた。村岡サンと同じことを想像していた。
手を振りあげた時のあの怯え様、頬にガーゼ、この夏の暑い日に脱がないカーディガンやパーカー。
「そんなわけないじゃないですか」
綺麗な笑顔で三木が笑う。作り物のように綺麗だ。
「じゃぁ、そのパーカー脱いでくれないか?」
三木の眉が下がる。
はぁ、と溜息をついてジッパーに手をかけた。
「筒井は、出てて欲しい」
絞り出したような掠れたその言葉に驚いた。
「何でだよ」
「お前には、見られたくない……」
「やっぱりお前……!!」
三木の肩を掴む。そういうってことは肯定したという事だ。つまり、三木は―――
「孝弘」
村岡サンの声が割って入る。三木君痛がってるだろ、と静かにそう言った。三木を見ると眉間にしわがよっていて唇は噛んでいた。
ばっと手を離す。悪い、と一言謝ったが三木は何も言わなかった。
「孝弘、分かってやれ」
その言葉に苛立ちや色々な感情が混じって思わず舌打ちをした。
三木が大きく方を揺らす。その瞳は恐怖が浮かんでいた。
「孝弘」
諌めるようにもう一度名前を呼ばれた。
「筒井、俺だってお前のこと大事だ。だからこそ、見られたくねーんだよ」
そう言った三木が悲しそうで、俺は分かったと言って部屋を出るしかなかった。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
78 / 106