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そのあと二人で遊んだ。二人の時間は意外と楽しくてすごく笑った。今度は三人で遊ぼうと言った。
帰る頃には雲が出てきていて日差しも和らいでいた。
三木の部屋から瑛さんの部屋までは15分くらいかかる。
ぽつ、と雫が雨に当たった。雨だ。次第に強くなっていく。さっきまで楽しかったのに憂鬱だ。
真っ白な絵の具に黒を落としたようなじわりじわりと嫌な気持ちが広がっていく。
その時携帯が震えた。
『筒井君、俺だけど』
さっきの話が思い出されて胸が高鳴った。凄くドキドキしている。落ち着かない。
瑛さんの声が毒みたいだ。耳に流れ込んでゆっくり体に回っていく。その声は甘く痺れて俺を戻れなくする。
「それでどうした?」
この時間はまだ生徒会の仕事のはずだ。
『今日は早く終わったから、帰ったのにいないから』
「俺今外だ」
『……今から迎えに行く、どこ? 』
「えと――」
俺も濡れながら歩いていたので瑛さんとはすぐに合流できた。
「何で雨宿りしておかないの?」
濡れた俺を見た瑛さんは怒った声でけれど優しく俺の頬に触った。
「だって、早く……なんでもない」
会いたかった、だなんてそんな柄でもない。でも会いたかった。雨の中で彼がもし来なかったらと思うと怖かった。両親のようにどこかへ行ってしまうと考えたらその場にじっとしてはいられなかった。
誤魔化す代わりに服の裾を掴んだ。彼がここにいることを確かめたかった。
「……帰ろう、風邪をひいてしまうよ」
肩を抱き寄せられて一つの傘に入った。濡れないようにと彼が引き寄せるから胸のあたりが濡れてしまった。
「俺もう濡れてるしいいよ」
「ダメ」
そう言ってより強く俺の肩を抱く。じわと触れた部分が熱を孕み出す。やがて心臓まで周り音を立て始める。
「瑛さんが濡れちまう……」
「これでいいんだよ」
見上げた横顔、ブロンドの睫毛で縁どられた宝石のような目。俺の黒いだけのそれとは全く違う。
どうして彼と並んでいられるのだろう。隣にいることをどうして許してくれるのだろう。
それを考えてふるりと体が震えた。
「瑛さん、寒い」
甘えたような声が出て自分でも驚いた。けれどやめられない。擦り寄る様に頭を預ける。
驚いたような瑛さんと目が合う。不快に思わせたならごめんなさい。
でも、俺は、泣きそうになって彼の顔を見て力なく笑うことで誤魔化した。
「つつい、くん」
肩から手が外れた。
あ、と思う。そこから温度が奪われていくような気分になる。
その手は俺の髪に触れて濡れた髪をそっと耳にかけた。一瞬耳に手が触れて声が出そうになった。
どくん、と心臓がまた跳ね始める。
急に視界が暗くなる。彼の手に塞がれたのだと直ぐに理解した。
「そんな目で人を見ちゃダメだよ」
耳元で囁かれて膝が震えた。彼の吐く吐息も敏感に拾って俺の耳をおかしくする。視界も塞がれているせいか普段よりぞくぞくが止まらなかった。
思考が遅くなる。そんな目? どんな目なのだろう、気持ち悪かった?
「ぁ、あきらさ――」
「帰ろう、筒井君に風邪をひいて欲しくない」
そんなことよりこの甘い痺れを止めて欲しい。おかしくなってしまう。あなたが俺に触れるから――
けれど俺は何も言えないで、そっと隣に並んだのだ。
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