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拒絶された。
ガン、と頭を殴られたような衝撃にさっきとは違う眩暈がした。
さっき瑛さんは雰囲気に流されただけだったんだ。だって俺もあの人も男だ。それにあの人は御曹司。住む世界が違う。だから彼はいつもみたいに遊んでただけだ。俺だけが、
そう分かると恥ずかしいだけじゃなかった。情けなくなった。そこで自分の今の格好にも気づいてさらに恥ずかしくなる。
「悪い、俺……」
瑛さんの隣をすり抜けてタオルと着替えを抱えてその場を離れる。瑛さんが俺を呼んだような気がしたけれど気の所為だ。
早くここを出ていこう。こんな事ばかりして、迷惑かけてばかりだ。
タオルで乱雑に体を拭う。視線を落としてまた自己嫌悪。
「はっ気持ちわる……」
俺の自身は兆していた。最悪だ。きっと瑛さんも引いたに違いない。好きでもない相手に反応されて嬉しいものか。
急いで服を着て、荷物を持った。散らかしていなくてよかった。すぐに出て行ける。
「何してるの」
寝室からの扉を塞ぐように瑛さんは立っていた。
「どいてくれ」
「ダメだ。荷物を抱えてどこに行くつもり」
「帰る、これ以上あんたに迷惑かけない」
無理やり通ろうとしたとき、強い力で壁に押し付けられた。
「俺がいつ迷惑だって言ったの?」
そう問う声は普段よりキツい。睨むようにして俺を見ている。噛み殺されそうだ。
「さっきみたいな事されたら、俺……本気にしちまうから……」
自分でも言ってることが馬鹿馬鹿しいのはわかっている。恥ずかしくて目は合わせられなかった。
「からかわれてるって、分かってるつもりでも、それでも……」
人差し指を口の前に出される。黙れということだろう。
「俺はからかうためにわざわざ髪を乾かしてあげたりしない」
濡れた髪を彼が触る。
「どうにも思っていない相手を抱きしめて眠らないし、迎えにも行かない」
強い瞳に射抜かれる。
「ましてやキスなんかしない」
親指が唇に触れた。
耳元に顔を寄せられる。
「好きだよ」
流し込まれた声は甘かった。
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