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三木くんの夏休み!! side:三木
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筒井はどうなったんだろう。羞恥ではなく頬を染める筒井を初めて見た。
あいつの事だからどうなっても連絡は寄越してくれるだろう。
「あーあ、筒井の可愛さを始めに知ったのは俺だったのに」
ちょっとだけ、面白くない。
俺の大事な大事な親友にあんな表情をさせる男が現れるなんて。
「泣かせたら潰す……」
相手が誰だか知らないけど、もし筒井を傷つけたらぶん殴ってやる。
「あー!! 暇だし遊びに行こっと」
現在午後6時、空はほんのり暗くなり始めたけどやっぱり蒸し暑い。
冷蔵庫の中から『元気が出るお茶(笑)』を数本とりだしてビニール袋に突っ込む。
手土産って大事だしね。
財布と携帯もって、部屋の電気消せば完璧。軽い足取りで俺は部屋を抜け出した。
「こーんばーんはっ!!」
軽く走ってたどり着いたのは筒井の住む寮。用があるのは筒井じゃないけど。
「よぉ、孝弘ならいねーぞ」
「残念、でも今日は村岡さんとこ遊びに来たんだよー」
そう言って目の前の男の人ににへらっと笑いかける。今日はシベリアンハスキーとダックスフンドが並んだTシャツいつものことだけど凄い趣味だな村岡さん。
「ちゃんとお土産も持ってきたから、部屋入れて下さい」
お茶を掲げて見せると村岡さんが小さく笑う。
「どうやって買ったんだよそれ」
「企業秘密です」
もう今日は仕事もないから、と村岡さんの部屋に招き入れてもらった。これで二度目だ。一度目は重苦しい気分だったけど今は違う。
「元気そうで良かったよ」
「ご心配と御迷惑をおかけしました」
「本当だぞ」
デコピンされてうへぇと変な声が出た。
ちなみに誰にも言ってないけれどあれから一度だけ先輩と会った。正確には見かけた。
背の高い男の人と一緒だった。前より元気はなさそうだったけれど笑っていた。
「三木くん飯食った?」
「まだですー、大人のリッチな夕飯をたかろうと思って」
「残念、今日はインスタントだ」
そう言って台所に引っ込んだ村岡さんは赤と緑の容器と割り箸を持って帰ってきた。
「あ、俺うどんで!! でもトッピングはそっちのかき揚げがいいんで下さい」
「図々しいな、俺がうどんだ。食わしてもらうんだからお前はそば」
「ちぇー」
我慢してそばをすすることのする。かきあげあるしいっか。
黙ってすすっているのも楽しくないので目だけで部屋を見渡してみる。
俺らの部屋を少し広くしたくらいの広さの部屋。ぐるりと見渡して写真が目に入った。
筒井に似た男の人と、若い村岡さんが楽しそうに笑っている写真。
「村岡さん、あの写真高校の時のですか?
今も飾ってるなんて、よっぽど仲良いいんですね」
「そうだよ」
それだけ言って立ち上がった村岡さんは大事そうに写真立てを持ってきた。
「俺の親友。孝弘の親父だ」
「どうりで似てると…………」
写真から目線だけを動かして盗み見た村岡さんの顔はすごく優しいものだった。大事なものを見る目で写真を見つめていた。
思い出に浸るのとは違う。まるで、昨日の筒井のようで――
「村岡さん!! 飲みましょう」
「は? いきなりだな」
「いいじゃないですか、せっかく俺が持ってきたんだから」
缶を上に並べる。村岡さんはしょうがねぇなぁ、とグラスをとりに立ち上がった。
その隙にもう一度写真を見た。よく見ると正面を見ていると思った村岡さんは筒井の父さんを見ていた。微かに頬を染めて、さっきと同じような目をして、ああ、やっぱり。
そっと写真を伏せる。面白くないものを見てしまった。ちぇ。
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