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そんな僕に叔父さんの不信な視線が突き刺さる。
「ミナト君? 貴方先程から知らない知らないと言う割にはやけに至る所で食い付きがいいですね」
「えっ、やっ、別にそんな事はっ……」
「……僕に隠し事、ですか?」
首を傾げながらにぃっこりと笑顔を見せる叔父さん。
怖い怖い怖いぃ!
白状しなきゃ喰われる……っ
そう体全体で感じた僕は「実は……」と話を切り出した。
「ふーんその様な事が……」
「別にただそれだけ、なんですけどね」
「いえいえ話して頂いてありがとうございます。そうか、僕が取って来た生放送をボイコット。いやぁ初耳ですねそんな話」
うふふアハハと確かに顔は笑ってるのに彼の目は確かに怒りに満ちていて、サーッと血の気を引かせつつ俺もアハハと乾いた笑みをもらす。
ごめん貴文さんとついでにトナミさん。成仏して下さい……。
「とりあえず話はわかりました。では彼には仕事をボイコットした分更に頑張って頂かなくてはね」
「あ、歌詞はいつまであげればいいんですか?」
立ち上がり帰り支度を始めた叔父さんにそう問うと、彼は「え?」と首を傾げる。
「新曲に使うんでしょ? だったらリテイク期間なんかも見合わせたら早くて二週間くらいですか」
「やだなぁ先程言いましたよ僕。机に一日二日間へばりつけばって」
「……はい?」
「明後日また来ますのでそれまでに死のうが気が狂おうが何が何でもお願いします」
「はぁぁあっ? って無理があるでしょっ?」
「さぁてじゃあ僕はもう一度事務所に帰って仕事せねばなりませんのでそろそろ失礼しますよ」
言うだけ言って立ち上がった叔父さんの腕を必死に掴みとる。
「せめて5日下さい!」
懇願に近い視線で彼を見るけれど、叔父さんはニッコリ笑顔で一言。
「やれっつったらやれ」
…………死亡確定。
「じゃあそう言う事で」
そう言って彼はそれはもう爽やかに去っていきました―――。
「マジでありえない」
机と向き合って早二時間。詩どころか言葉の一句さえも思い付きやしない。
「んー、月に咲く花弁……違うなぁ。優美なる千年に鳴る琴の音が……これも違うな」
さっきっから叔父さんにもらった楽曲のMDをループで長し続けているけど全然ダメ。流れる楽曲はアップテンポで構成されたものだから、しっとりとした歌詞は多分合わないと思う。でも叔父さんは和言葉を使って欲しいって言ってたし。
「暫く書いてなかったし、感が鈍ってんのかなぁ」
うーんと唸りながら携帯のメール画面を睨み付ける。
僕はいつもこのメール新規画面に詩を書きこんで行くんだけど、その画面は真っ白のまま。”あ”の字さえも書かれていない。
「ちょっと気分転換しよう」
パタンと携帯を閉じると、流れている楽曲を一旦停止して代わりにこの間買ったSAGINの曲をかける。
これもまたアップテンポの楽曲で、一人一人が一節をソロで歌いサビを皆でというノリのいい曲。皆各々個性的な声でハモりも綺麗。そんな中でも一番に耳に残る声があった。
その声はとても中性的で、よく言えば少年。悪く言えば少しざらつき感のある、そんな声だった。
あ、これトナミさんだ。
そっと耳をすませる。
メンバーの中でも群を抜いて個性的なこの声。多分さらっと聞き流すだけでも聞き分けが出来るんじゃないかな?
二曲目に流れ始めたのはバラード。この楽曲ではシーナと樹(だっけ?)の二人のハモリが一番綺麗で楽曲を際立たせている。
けど何でだろう。トナミさんの声だけがとても苦しそうに聴こえるのは。
あれ? もしかしてトナミさんて……
「バラード苦手なの……かな? 苦手って言うより声質の問題かもしれないけど」
ーなんかパッとしないなぁ。
「なんて言うかトナミさんの声だったらもっとこう……上がり下がりの激しい曲とか、ころころ転がるボールみたいなノリの曲とか」
くるくると指先で宙にのの字を書きながらうんうん唸る。
「そんな曲に合う歌詞……ねぇ」
上がり下がりの曲……って言ったらネコふんじゃったとか? ネコ、ネコと言えば金の瞳。金と言えば……月?
「んー……月夜に咲く一輪の花優雅な香り。香りよ、のが昔っぽいかな」
一度閉じた携帯を開き文面に今思い付いた言葉を適当に書いていく。
「月の光浴びて咲いた美しき月光華」
あ、何かいい感じかも。
「障子を透ける青色美しき夜光は月の媚薬。遠くで聞こえる楽の音やわらかく響き渡る――――」
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