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「こらトナミ、お前いい加減に出てこいよ。」
『やだ!』
「やだってなぁ、いつまでもそうしてたって仕方ないだろうが」
『やだったらやだーっ!』
「はぁ……」
叔父さんを追って三階へ上がると、物置と札のかけられたドアの前で貴文さんが深く溜め息をついていた。
その横では叔父さんも同じく溜め息をつきながら頭を抱えていた。
「叔父さん」
声をかけると、叔父さんは頭をあげ「あぁ」と僕に視線を向ける。
「どうかしましたかミナト君」
「え、ミナト?」
名前に反応した様に貴文さんもひょいと視線を此方へと向ける。
「あれ、何でお前」
ここにいるんだ? と首を傾げた貴文さんに叔父さんが実はと言葉を付け足す。
「彼は僕の甥で、今回作詞を頼んだんです」
「甥っ? 作詞を頼んだってお前確か凄腕の作詞家に頼むって言ってなかったか?」
「ええ、だから彼がそうなんですよ」
さらりと言われたその言葉に、貴文さんは「はぁ~」と驚きに目を見開く。
「いや、まぁ人は見掛けで判断しちゃダメだもんな。じゃあま、改めて自己紹介しとくか。臼杵貴文、MEETING事務所の取締役兼事務員。よろしくな」
「取締役っ?」
そう声をあげた僕に、貴文さんがあははと乾いた笑みをもらす。
「や、まぁ驚く気持ちはわからんでもないが……」
「だ、だって貴文さんこないだ自分はしがない高校生で、アルバイトで事務員してるって……」
「まぁ取締役は俺の親父なんだけどな本当は。ちょっと事情があって今は俺が社長やってるんだ」
「そう、なんですか……。でもすごい、高校生で芸能事務所の社長してるなんて」
「そんな事ないって。大まかな業務は美月に任せてるんだ。俺はまだ勉強中って感じだな」
十七って言ったら僕と三つしか変わらないのに。
すごいなぁ。
関心しながらウンウンと頷いていると、突然貴文さんが「あ」と声をあげてドアの方に向き直る。2・3度ドアをノックすると「トナミ」と中に呼び掛ける。
「おいトナミ、ミナト君来てんぞ」
『ミナト……?』
「ほらこの前お前がCD買えって追い掛け回してた奴だよ」
「あ、あの、トナミ……さん?」
貴文さんに次いで僕もドアの向こうにいるらしいトナミさんに声をかける。
するとガチャリと施錠が解かれる音がして、少し開いたドアの隙間から黒い瞳がひょこっと覗く。
その瞳が僕の姿をとらえるなり半開きのドアがいきおいよく全開され、何故か彩り豊な深緑色の羽織を羽織った姿のトナミが姿を現す。
「うわっマジでミナトじゃん! 何してんだよこんな所で」
バンバンと僕の背中を叩きながらアハハハと爆笑するトナミさん。
いや、い、痛いんだけど。いたたたっ……
「トナミさんが新曲のレコーディングするって聞いたから。その見学に来るかって叔父さんに誘われて」
「叔父さん?」
きょとんと首を傾げたトナミさんから叔父・美月へと視線を向ける。
「彼は僕の甥なんですよ」
「甥っ子っ?」
その言葉にトナミさんも先程のメンバーと同じ反応を返す。と言うか皆の叔父さんのイメージって一体……。
「ふーん言われて見れば似てるかも。喋り方って言うか」
「でも顔はどちらかと言えば貴方に似ていませんかトナミ君?」
「え? 俺ぇ?」
「あ、それクラスメートにもこの間言われました。トナミさんと似てるって」
顔と言うか雰囲気がって言われたんだっけ?
「そっかなぁ、別に全然って感じだけどなぁ」
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