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【R18】ヤンデレよりの部下×上司
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玄関の電気をつけると、予想通りの光景が目に入り、思わず眉間にしわが寄る。
「またか」
朝、会社へ出掛ける前とは微妙に異なる位置に置かれている靴とスリッパ。
目を下駄箱の上へ向け、わざと置いてあった葉書の位置も僅かにずれているのを確認する。
重々しくため息をついた後、鞄から新しいスリッパを取り出してそれを履く。
左手にリビングとキッチン、右手には寝室があり、廊下を真っ直ぐ進むとトイレ、その右側にはお風呂と洗面所という間取りの1LDKに俺が越してきて早1ヵ月。
初めは仕事先の寮へ実家から移ろうと考えていたのだが、自分の部署に新しく配属された部下から薦められてこのアパートの存在を知り、どうしようもなく惹かれてここへとやってきた。
駅から歩いて5分、大型ショッピングセンターへは市民バスで10分もかからないという魅力的な立地の上、まだ真新しい築数年の三階建てのアパート。
1LDKではあるが間取りは広く、リビングは12畳もあり、台所にキッチン、ベランダまで設置してある。浴槽も広く、寝室は和室で8畳。
そんな好物件に関わらず、不似合いなほどの安い賃金。
不動産へと、部下に連れられたまま二つ返事で契約した。
「うまい話には何かあるもんだが……」
まさかこんなことになろうとは誰が予想出来ただろうか。
前までは用意していなかったスリッパもあれ以来、今では必需品である。
つい、あの時の感触を思い出してしまい身震いをする。
フローリングの廊下をじっと見つめて、異変がないかどうかを確認してから恐る恐る歩き出す。
以前までは電気も点けずにリビングへ向かっていたのだが、先日、いつものようにリビングへ向かおうと廊下へ踏み出したときに身に覚えのない液体を踏みつけてしまったのだ。
何か確かめるため指先につけて匂いを嗅いだ瞬間、吐き気に襲われたのを今でも明確に覚えている。
先ずはトイレ、それから風呂場へ顔を出した後、寝室のドアノブに手をかける。
ドアを開けた瞬間、独特の強烈な臭いが鼻につく。
急いで寝室の窓を開けて、ドロドロに汚れた布団カバーとシーツをベッドから外してごみ袋に入れる。
シュッシュとスプレーをまいて、幾分か臭いの和らいだ寝室を後にし、ごみ袋を手に玄関から外へ出る。
スーツのまま、早足にゴミステーションへと向かい、放り投げる。
ごみ袋を持っていた手があの臭いを放っているような気がして、一刻も早く手を洗いたい欲求にかられて小走りに部屋へと戻ってきた。
ドアを開けると、リビングのドアの隙間から明かりが漏れていることに気づき、血の気が引いていく。
グッと手に力を込めて、深呼吸してから勢いよく扉を開けた。
「あ、課長、お帰りなさい!」
フリフリのエプロンをつけた部下──このアパートに前から住んでいるらしく、俺にここを薦めてきた人物──である島崎が、両手に持っていた鍋を食卓の上に置く。
鍋からは湯気がたっており、肉じゃがの匂いが食欲を刺激する。
「お前、ここで何して」
「え? やだなあ、課長。 今日は同棲を初めてから1ヵ月経った記念日じゃないですか」
「記念日……?」
「ほら、課長の大好きな肉じゃがですよ、冷めない内に召し上がってください」
捲りあげられたワイシャツから覗く筋肉質な腕、真っ白いフリルのついたエプロンを違和感なく着こなす幼い女顔に、明かりに照らされてキラキラと光る金髪の男が嬉しそうに目を細める。
「課長?」
首をかしげてこちらへ歩み寄る目の前の男から距離をとるため後ろへ下がる。
ドンッと勢いよく背中が寝室の扉にぶつかり、慌てて玄関へ逃げようとする。
「どこ行くんですか、課長」
腕を引っ張られて、バランスを崩し、尻餅をつく俺の真横に彼の腕が伸びる。
「どこへ行く気です?」
「ど、どこって……」
刺すような視線から逃れようと目を瞑り、俯く。
すると、あっ、と目の前の男が声をあげたので、目を開けて顔をあげる。
妖艶に微笑む彼に鳥肌がたつ。
「課長、もしかして誘ってます?」
ふふふ、と笑いながら男は俺の片腕を掴んだまま立ち上がり、寝室のドアノブに手をかけてゆっくりと回す。
ドアの開く音を聞きながら、俺の血の気が引いていくのを感じる。
有り得ない現実から逃避しようと意識を手放そうとした瞬間、目にうつった奴のフリフリのエプロン。
スラックスがテントを張っているのだろうか、不自然に盛り上がっているそれを最後に、俺の視界は真っ暗になった。
(これが全部、夢だったらいいのに)
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