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【R15】ヘタレ×誘い受け
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こいつと付き合って数日が経つ。
「里山、一緒に飯食お」
「おう」
じゃあと、クラスの奴等に手を振ってから俺の隣に並ぶ。
俺の肩の辺りまでしかない、平均よりも低い里山は、背をごまかすかのように長い前髪を頭上で結んでいる。
こいつが動く度に頭の上のちょんまげも揺れる。
それをちらちら盗み見ながら俺は無言で購買までの道のりを進む。
──別に、わざと話さないわけではない。
もともとこいつとは趣味も合うし、お互いお喋りな方なのでよく駄弁っていたのだ。
付き合う前までの話だが。
はあ、と思わずもれてしまった溜め息に、焦って手で口をおおう。
ちらり、と彼へ目を向けると顔を伏せているためよくわからないが、なんとなく雰囲気が重たい気がする。
だんだんと彼の歩みが重くなり、とうとう立ち止まってしまった。
「里山……?」
しゃがみこんで上目にこいつの顔を覗きこむと、大きな目に涙を浮かべていて。
ポタポタと廊下へ吸い込まれていく滴。
嗚咽がもれだして、里山の細い肩が震え始める。
狼狽えながらも泣き止んで欲しくて、彼の名を口にする。
「里──」
言い終わる前に、突然俺を押し倒した里山が俺にまたがる。
そして、しゃっくりをあげながら何度も何度も俺の胸板を叩き始めた。
「堀田のバカバカバカ……!」
弱々しく震える里山の声をききながら、せわしなく揺れる彼のちょんまげを見つめる。
「んで、なんでっこんな、風に……っひっく、なっちゃったの」
叩くことをやめて、顔を手で覆い、嗚咽まじりに彼の本音が紡がれる。
思わず彼に向かってのびてしまったやり場のない手を引っ込めようとした時、それを拒むかのように里山の華奢な手が延びてきて、俺の手をとる。
久しぶりに触れた彼の温もりに緊張してしまってうまく声がでない。
パクパクと金魚みたいに口を開閉しているだろう俺の唇に、里山のぷっくりとした唇が触れる。
「……なんて、ね」
ペロリと真っ赤な舌を出した後、口角をあげる。
「お前、マジで奥手すぎ。 なんなの、もしかして緊張して話せねえの?」
今までアホみたいに話してたくせに、そうニヤニヤしながら俺を見下すこいつにムッとして、睨み付ける。
「うそ泣きとかふざけんなよ」
焦るじゃん、そう口にしようとした言葉をのみ込む。
「なあ、今度はお前からキスしてよ」
はやく。
そう、声には出さずに唇を動かす。
先程触れた柔らかい唇に目が釘つけになる。
「堀田」
里山の顔がだんだんと迫ってくるにつれて速くなる鼓動。
「ま、待てって里山!」
里山の唇を手で塞いで、もう片方の手で自分の顔を隠す。
「やばい、恥ずかしい。 ちょっとたんま、休憩」
指と指の間からちらっと里山の様子をうかがう。
ピクピクとひきつらせながら青筋を浮かべる里山。
ガリッと指を噛まれて、あまりの痛みに目に涙がうかぶ。
「まじ有り得ねー! ぜってえもう俺からてめえにキスしてやんねーからな!」
スッと立ち上がり、一人歩き出す里山をポカンと見つめた後、我に返って慌てて立ち上がり、小さな背中を追いかける。
「ちょ、里山!」
俺の呼び掛けに立ち止まって振り返ると、里山は黙って手をつきだす。
「ん」
「え、なに? 里山」
「ん!」
顎をしゃくって、手をこちらへ再度つきだす。
──もしかして、これって……。
「ああもう!」
おもいっきり手を引かれる。
「さっさと手握れよア堀田!」
そう言ってきびすを返して歩きだした里山の顔は真っ赤で。
緩む口許を隠しながら俺も歩き始めた。
(ちょ、待って里山! 皆見てるって!)
(……今頃気づいたのかよお前)
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