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【R18/暴力表現有り】歪んだ愛情表現しか出来ない浮気性×臆病者←俺様
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「あっ……!」
女の甲高いあえぎ声が聞こえる度、俺は耳を押さえている両手に力を込める。
醜い感情が込み上げてくるのを必死におさえこみ、ただただ早くこの行為が終わることを待つ。
一際大きい女の声と共に、タケヒロの吐息混じりの声がして、もう終わりが近いことに安堵の息をもらす。
「タケヒロ」
やけに甘ったるい女の声がして、それに答えるかのようにタケヒロが鼻で笑う。
ちゅっちゅ、と軽いリップ音がしだして、いつの間にやらそれは水音を纏いはじめる。
「え……?」
なんで、どうして?
──いつもなら、二回目はしないのに。
ぎゅっと胸が締め付けられて、苦しくて苦しくて仕方がない。
次から次へと止めどなく流れ始めた涙を拭いながら座り込む。
なんで、どうして。
なんで──
ブブブ、と携帯が震える。
ポケットから取り出すと、ディスプレイにはショウタロウの文字。
「しょーたろ」
擦れた声で彼の名を呼び、電話に出る。
「もしもし」
≪遅い。 この俺が電話してやったんだ、ワンコールで出やがれ≫
「ふはっ、なにそれ」
いつも通りの傲慢なショウタロウの態度に顔がほころぶのがわかる。
≪今お前ん家の前に居んだけど≫
「へ?」
≪偶然こっちの方に用事があってな、ついでだついで。 どうせ暇してんだろ? 飯食いにいこーぜ≫
「ふふ。 偶然、ね。 うん、わかった。 今行く」
じゃあね、と口にして携帯を閉じて立ち上がる。
「ちょっとタケヒロ?」
「うっせえ、静かにしろ」
ふいに耳に入った二人のやり取りを不信に思い、ドアが開けっ放しの寝室を覗く。
「コウタ」
こちらを睨み付けているタケヒロと目が合い、息が詰まる。
「ショウタロウって誰。 随分楽しそうじゃねえか」
女の人はタケヒロの首に腕を回していて、俺と目が合うと憎らしげに睨まれる。
「えと」
──どうしよう、タケヒロ怒ってる。
突然チャイムが鳴り、そちらに意識が向く。
「おい、コウタ。 おせえよ早くこい」
「しょーたろ」
玄関へ足を踏み出した瞬間、勢いよく誰かに腕を引っ張られる。
「……タケヒロ」
不機嫌そうな顔で俺を見下すタケヒロの黒曜石のような綺麗な瞳に心を奪われる。
「行くなよ」
「ちょっとタケヒロ!」
裸の女がベッドからこちらへ走りより、タケヒロの手をつかむ。
きゃっ、と短い悲鳴と共に尻餅をつく女を見向きもせずに「触るな」と冷たい声を吐き出し、眉間にしわを寄せる。
女は傷付いたように顔を歪ませてふいてしまった。
「だ、大丈夫……?」
彼女に近寄り、手を伸ばした瞬間、おもいっきり手を叩かれる。
鬼のような形相で俺を睨み付けて、ヒステリックに叫ぶ。
「ふざけんな! 気持ち悪いんだよ!」
“気持ち悪いんだよ!”
まだ何かを喚いているが全然耳に入ってこない。
先程投げつけられた言葉で頭の中が一杯になる。
渇いた音に現実へと意識が引き戻される。
ヒリヒリと痛む頬。
「てめえふざけんなよ」
地を這うようなタケヒロの声がして、女の悲痛な叫び声がする。
馬乗りになって女の長くてふわふわな茶色い髪を引っ張りあげるタケヒロ。
「おい! 開けろ!」
「しょ、しょーたろ」
震える足を叱責させて玄関に向かい、ドアを開ける。
「コウタ!」
「ショウタロウ」
目の前の逞しい身体に抱き着く。
「タケヒロが、タケヒロが」
ポンポンと俺の頭を撫でてから「ここから動くなよ」と耳打ちして二人の方へ走り出す。
俺は怖くて怖くてしゃがみこみ、両手で耳をふさぐ。
女の悲鳴に、タケヒロの怒声。
それを制止するショウタロウの声に鈍い音。
もうやだ。
なんで、なんで、どうして。
どうして、今日に限ってこんなことになってしまったんだろう。
いつもなら、タケヒロと見知らぬ女性の営みを耐えていたらいい。
そうしたら、女との営みを終えたタケヒロが俺を抱いてくれる。
甘い言葉を囁いてくれて、それで──
「コウタ」
「タケヒロ……」
奥から女の啜り泣く声がする。
こちらを見るタケヒロの目は心なしか濁っていて、恐怖心を抱く。
「コイツ、誰」
額から血を流しているショウタロウの髪の毛を掴んで、俺の方へ向ける。
「しょ、ショウタロ……」
彼の方へ駆け出そうとするが、頭上から冷たいタケヒロの声が降ってきて体が動かなくなる。
「コウタ、浮気は許さないよ」
こちらへと近付いてくるタケヒロの濁った瞳に囚われて、動けないまま彼を見つめる。
「コウタ」
思ったより優しく抱き締められて耳元で囁かれる。
「お前は俺だけのもんだよ」
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