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夫婦達の買い物
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赤司をお財布変わりに、やっとの思いで昼食を食べ終えた一行は目的のベビー用品売り場へとやって来た。
フロアの5分の1をしめる大きな店内には、様々な赤ちゃんグッズが並び、お腹の大きな妊婦や、小さな子連れの親子が幸せそうに買い物をしている。
キセキの嫁達も、品数の多さに目を輝かせて、旦那そっちのけで散策を始めた。
「…笠松さん、最初は何から買いますか?」
「…やっぱり、布団とか風呂とかデカイやつからだろ。」
「…そーっすよね。先に郵送した方が買い物楽ですよね。」
黒子が問えば、笠松と日向が答えた。
話しながらスタスタと歩く嫁達の後ろを、壁のような男達がゾロゾロと付いて歩く。
そんな中、氷室が突如「…Wow! Very cute❤︎」と言って脚を止めたので、皆が振り返ると、そこには哺乳瓶を手にした氷室が立っていた。
「…これ、哺乳瓶だよね?こんなに可愛いデザインがあるなんて、知らなかったよ。」
手に持っている瓶は砂時計の様な形をしていて、カラフルな模様が描かれており、ピンク色をしていた。
「…敦、ちょっと持ってみてくれないか?」
哺乳瓶を差し出されて「…え~…。」と言いながらも、棒付飴を口に含んで瓶を受け取ると、ピンク色の瓶はスッポリと紫原の片手に収まってしまう。
「…小さい…。こんなんで赤ちゃんてお腹いっぱいになるの…?」
「…産まれたばかりの頃はあまり飲まないんだって。成長するに連れて、沢山飲むようになるんだって、先生がおっしゃっていたよ。」
「…へぇ~…。…ならさー、俺の作ったケーキ、いつ食べられる様になる?」
「…ケーキの前にまずは離乳食だね。赤ちゃんは少しづつ食べ物に慣らしていかないとダメなんだ。」
「…まだ先なのか~…。早く美味しいお菓子とか一緒に食べたいのになぁ~…。」
「……敦…。」
氷室は少し驚いた顔をした後で「…そうだね。」と優しく微笑んだ。
そんな2人のやり取りを、微笑ましそうに見ていた皆は、再び脚を動かしはじめた。
布団とバス用品の売り場に来た一行は、あれでもない、これでもないと物色をはじめる。
「…幸男さん、俺の家は布団より、ベビーベッドの方が良いと思うんスけど、どうっスかね?」
「…そうだなぁ。…昼寝用に布団も欲しいけど、夜はベッドの方がいーかもな。」
「…じゃあ、両方買いましょう!」
「……つーか、3人で川の字になるんじゃなかったのか?」
『…ベビーベッドは幸男さんと俺が愛を育む時に使うんすよ❤︎…隣に寝てたらベィビーが危ないじゃないっスか。』
コソっと耳打ちすると笠松は顔を真っ赤にして「黙れ!馬鹿野郎!!」と黄瀬に腹パンチを食らわせた。
「…征十郎、うちは畳だから布団の方がいいよね?」
「…光樹…。…布団なら家が代々贔屓にしている老舗の布団屋があるんだから、そこで特注すればいいだろう?」
「えぇ!?要らないよ!あの金ピカの刺繍がされた布団でしょ!?…赤ちゃんが安全に寝れればそれでいーの!」
「……そうか…。光樹がそう言うなら仕方ないね…。ここで買って帰ろうか…。」
あんな眩しい布団では、赤ちゃんが落ち着いて寝られないと焦った降旗は赤司が納得してくれて、安心の溜息をついた。
「…翔一さんはどうしたいっすか?」
「…ん~?ワシはどっちでもえぇで。孝輔の好きにしいや。」
「……にんで…ねたいんで…。」
「…なんやて?」
「……その…、3人で一緒に寝たいんで…布団でもいーっすか…。」
目元を赤らめてジッと見下ろしてくる、薄茶の瞳をメガネ越しの糸目が見つめた後「…お前さんはホンマ可愛えぇのう…。」と言いながら、自分よりも高い位置にあるクリーム色の頭を撫でた。
「…ほんなら、布団買おか。」と頷いてやれば、若松は「……うす…!」と嬉しそうに笑った。
「…大我くんはベッドの方がいいですよね。」
「…そーだな。海外には布団なんてねーから、ベッドが当たり前っーか…。そっちの方が安心出来る。」
「…でしたら、僕らはベッドを買いましょう。…ん?…義兄さん達もベッドにするみたいですね。」
小振りな指が指し示す方向を見れば、そこには紫原と氷室がベッドの策を触りながら話していた。
「…木で出来ているのは温もりがあっていいね。」
「…ん~…。よく分かん無いけど、室ちんが気に入ったならこれでもいーよ。」
「…俺の好みに合わせてもいいのかい?」
「…うん、室ちんがメインで使うんだから、室ちんが気に入ったやつの方がいーでしょ。」
「…ありがとう。…敦は優しいね。」
にこっと氷室が微笑むと「…別に普通だし…。」と言いながら、照れを隠す様に飴をガリっと噛んだ。
「…真ちゃん、何を真剣に見てんの?」
「…風呂をどれにするか見ていたのだよ。」
「…直接家の風呂に入れても大丈夫みたいだけど、別に買う?」
「…浴槽には目に見えない雑菌が多く繁殖しているのだよ。…その湯船に赤子を浸からせるなど、不衛生すぎる。ここは別に買うべきだろう。」
「…真ちゃん、相変わらず歪みないwww」
「笑い事ではないのだよ!和成!赤ん坊が雑菌に感染し、合併症を起こした場合は…」
話が長くなりそうだと感じた高尾は「…はい、はーい、分かったから風呂買おうな。真ちゃんが納得したやつでいーからさ。」と旦那を上手く宥めた。
「…寝るのは布団でいーとして、風呂はどーする?買うか?順平。」
「…そーだなぁ…。欲しいけど、うちの風呂場には狭くて置けねーだろ。」
「…だよな。なら、風呂は諦めるかぁ。」
「…無理に買って邪魔になんのもヤダしな。…お前が赤ん坊と一緒に入って、身体支えてれば大丈夫だろ。」
「…え?俺が支えるのか…?」
「ダァホ!何の為の馬鹿でかい手だ!それとも、お前が赤ん坊を洗うのかよ!」
「…ははっ!無茶言うな、順平。教わっても出来ない自信があるぞ。」
人の良さそうな笑みを浮かべる頬をブニっと鷲掴むと「…ちったぁ覚えろよ、コラ…。」と日向のこめかみに青筋が浮き上がった。
「…こんなに沢山あると、迷いますね。」
「…んなの、良の好きなやつにすればいーだろーが。」
「……なかなか決まらなくて…、すみません…。大輝さん、お暇ですよね。」
「…暇だなんて言ってねーよ。…チビ共が使うもんなんだから、気に入るのが見つかるまでゆっくり選べ。」
その言葉に、桜井は「……はい、ありがとうございます。」と言って頬を薄らと赤く染めた。
つまらなそうな顔をしながらも、青峰は文句1つ言わずにあれこれ悩む桜井の後を付いて周り、時々不安そうに見つめてくるキャラメル色の瞳には「…こっちの方がいい。」と答えた。
それぞれが考えを巡らせながら、大きな荷物を買い終えて、郵送の手続きを終えると、今度は日用品に必要な小物を買いに向かう。
赤ちゃん雑誌『たまごちゃんクラブ』に付録として付いていた、お買い物リスト表を片手に、嫁達は広い店内を何度も往復し、旦那組に持たせた買い物カゴをいっぱいにしていった。
ベビー服売り場に差し掛かると、いきなり高尾が「うわっ!これヤバイ!」と大きな声を上げて、嫁達を呼んだ。
その声に誘われて嫁達が高尾に近付くと、皆を代表して笠松が「…どうした?」と声を掛けた。
「…笠松さん、皆!これ見てくださいよ!可愛くないっすか?」
はしゃぐ高尾の指先を辿れば、そこには小さな男の子のマネキンが、怪獣の着ぐるみを着て立っていた。
その脇にはうさぎの着ぐるみを着た女の子のマネキンもいる。
「…わぁ!可愛い!」と同時に声を上げたのは降旗と桜井で、その後に続いて他の嫁達も声を上げ、その服に魅入った。
「…excellent!!なんて愛らしい服なんだ!!」
「…へ~、着ぐるみか…。可愛いもんだな。」
「…お、意外に若松もこういうの好きなのか?」
ディスプレイの服をいじっていると、背後から声をかけられて、若松はビクっと肩を跳ねた。
「…え!?あ、いや…、好きって訳では…。ただ小さい子が着てたら可愛いかなって…。笠松さんはどーっすか?」
「…桜井とか降旗みてーに可愛いの基準は良く分かんねーけど、これはありなんじゃねーか?」
「……色んな服がありますね。着ぐるみだけでも、かなりの数があるんじゃないでしょうか。」
「…ホントにスゲー品揃えだな。…お、見ろよ、黒子。テツヤ2号みたいなのもあるぞ。」
日向の手にはハスキー犬っぽい着ぐるみが握られていた。
「…ホント可愛いねー。ちょっと欲しくなっちゃうな。」
「…oh!降旗君ならきっと似合うよ❤︎」
「…えっ!?…いや、俺は着ないですよ!氷室さん!」
「…着ないのかい?…折角、降旗君と桜井君のバニーを見れると思ったのに…。残念だよ。」
「…なぜ、桜井も一緒なんですか?…しかもバニーって、何か違う気が…。」
「……お前ら…。その前にこれ、子供用だから着れねーだろ。」と笠松が冷静にツッコんだ。
桜井はカシャカシャとハンガーをレールにスライドさせて、着ぐるみをチェックしていく。
「…桜井、何探してんの?」
「…あ、高尾くん。…えっと、黒豹って無いかなと思って…。」
「…黒豹?……ハハーン、なるほどね。青峰のイメージで黒豹を探してるって訳か。」
「…はい、双子ちゃんに着せたら可愛いだろうなぁって…。そう思ったら、欲しくなってしまったんです。」
「………うん、いーな。」
「……え?」
「…桜井、それ採用!」
「……え、え??」
不思議がる桜井を余所に、高尾は何時もの悪戯っぽい笑顔を作ると、嫁達に向かって「……皆!ちょっと聞いてー!」と呼びかけ、高尾の澄んだ声に再び皆が注目した。
「…桜井がいいヒントくれたから、思い付いたんだけど、提案してもいーっすか?」
「…ろくでもない悪戯だったらシバクぞ。高尾…。」
「…笠松さんの俺へのツッコミが相変わらず鋭いwww」
「…余計な事はいーから、早く話せ。」
溜息を付きながらも、腕を組んで聞く大勢を整える笠松を見て、高尾は心の中で『厳しいけど、やっぱ優しいんだよな』と思いながら口を開いた。
「…こんだけ洋服の種類もある事ですし、旦那に似た動物探して、着ぐるみ買いません?…そんで、その服のサイズが合う様になったら、子供達に着ぐるみ着せてママ会なんてどーっすか?」
「…good!それは素晴らしいアイディアだね!」
「それいいね!やりたい!お揃いでママ会、やりたい!」
「…みんな絶対可愛いですよ!…その時は僕、お菓子沢山作りますから!」
「…桜井、気が早すぎんだろ…。」
その提案にノリノリの氷室と降旗に桜井が賛同し、若松が苦笑いをしてツッコんだ。
「…その提案、良いと思います。僕も賛成します。」
「…いいな、それ。気に入った!」
黒子が嬉しいのか何なのか、イマイチ分からない表情で頷き、日向もその案に乗った。
そして最後に、皆の様子を見ていた笠松が「……悪くねぇな。…よし!全員で揃えるか!」と笑えば『やったー!』と四方から声が上がった。
「…じゃあ、早速服を選ぼうぜ!」
まとめ役的な笠松に許可を得た高尾は、率先して進行役をかって出ると、ズラリと並ぶ服に手を伸ばした。
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