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【オマケ小説】紫氷夫婦の過去
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【緑高+紫氷】紫原と氷室の過去
「…うわ、見てくださいよ、氷室さん!この人形超ブサイク!ww」
「…本当だね。赤ちゃんが見たら泣き出してしまうんじゃないかな。」
「…でも、何か愛嬌があるってゆーか、癖になるブサ可愛さっすねwww」
楽しそうに笑う嫁達を、少し離れたベンチから緑間と紫原が見ていた。
「……氷室さんは、昔と随分雰囲気が変わったのだよ。」
「……まぁ、色々あったからねぇ~…。」
「……なんだ、随分と意味深な言い方だな。」
「…うん。だって、俺達1度別れたらしいし?」
「……なんなのだよ、その『別れたらしい』と言うのは…?」
「…ん~…俺は別れたつもりは無かったんだけどさー。同棲して2年ぐらい経った時に、室ちんが何も言わずに出て行っちゃったんだよね。」
「…出て行ったって…お前は追いかけなかったのか!?」
「……だって、ケンカして出て行くのなんて良くあるし、つぎの日には家に帰って来てたから、大丈夫かと思ってさ…。」
「……お前と言う奴は…。」
緑間は項垂れて溜息を付いた。
「…でも、その時はいつもと違って、室ちんが帰って来なかったんだよね…。何日待っても連絡すら無くて、その時に初めて室ちんは俺の前から居なくなったんだって気付いた…。」
「…気付くのが遅いのだよ!」
「…緑ちん、いちいちうるさい!」
「…いいから、ほら、続きを話せ。」
抹茶飴を緑間が差し出すと、それを舐めながら紫原が話を続けた。
「……んで、あちこち探してみたけど、やっぱり見つからなくて、なんかヒントはないかな~って、室ちんの部屋を漁ってみたの。」
「……何か手掛かりは見つかったのか?」
「……結局、見つけるヒントはなかったけど、違う事に驚いた…。」
「……違う事…?」
「…うん。…室ちんの部屋は、ケーキ屋に関する資料や本がいっぱい置いてあってさ…、良くわかんないけど、室ちんの名前の経理とか簿記みたいな合格書もあった。」
「…それは…氷室さんが、お前の店を持つ為に、準備をしておいたのではないか…?」
「…そうだと思う…。昔、自分の店を持って、2人で働けたらいいね、って話してたから…。でも、俺はパティシエになっても適当にダラダラしてた。」
「……お前のやる気のない態度に嫌気が差した、と言う事か…。」
「……多分ね。…でも、原因はそれだけじゃなかったみたい。」
「……他に何があるのだよ…。」
「……ん~とねぇ…」と口の中の飴をコロリと転がして少し目を泳がせる。
「…部屋を漁った時に、俺宛ての手紙を見つけたんだよね。」
「……その手紙には何と書いてあったのだよ?」
『敦へ
俺が側にいると、敦は駄目になってしまうみたいだ…。
だから俺は、君の元を去るよ…。
俺は敦を愛していたけれど、君は俺を愛してくれていたのかな…。』
手紙の内容を聞いて、緑間の眉間に皺が寄る。
「……紫原…お前、氷室さんにちゃんと言葉で好きだと伝えていたのか?」
「………言ってない…。」
「……お前という奴は……。」
緑間は先程と同じ台詞を言うと、再び溜息を付いた。
「…だって、高校の時から室ちんが側に居るのは当然だったし、俺を甘やかすのも当たり前ってゆーか…」
「……紫原…時に言葉は身体を繋ぐよりも大切で必要な事なのだよ…。」
「…分かってるし!今はちゃんと思った事全部言うようにしてるし!」
膨れる紫原に、今度は小豆飴を差し出すと「…続きを話せ。」と眼鏡を押し上げた。
「……室ちんが居なくなって、俺は1人じゃ何にも出来ないんだって初めて気付いた…。帰って来てって言いたいのに、何処にいるか分かんないし、どうすれば良いのかも分かんなくて、赤ちんに相談したんだ。」
「…赤司は何と…?」
「…室ちんを探す事は簡単だけど、探す代わりに条件があるって…。」
「…その条件とは…?」
「…俺がお菓子界で名の通るパティシエになって、自分の店を持つこと…。」
「……なるほどな…。」
(……相変わらず計算高い男なのだよ…。)
緑間の脳裏にしたたかに笑うオッドアイが浮かんだ。
「…それでお前はその条件を満たし、赤司から氷室さんの居場所を聞いたのだな…。」
「…うん、そう。…室ちんはアメリカに居てさ、しかも金髪の男と一緒に住んでた…。」
「……それは…恋人だったのか?」
「…知らない。…そいつが室ちんに触った瞬間にぶん殴ってたから。」
「…なんてことしたんだって怒られたけど、素直に室ちんに触ったのがムカついたって言ったら、室ちんすごい驚いた顔してた。」
「…それから、今までにもらったメダルとか賞状全部と、あと店の権利書?ってゆーのを室ちんに渡して、謝った…。」
紫色の瞳を少し細めて、視線の先にいる氷室を見つめる。
『……俺、一流のパティシエになったし、自分の店も持った…。…室ちんが言ってた夢、全部叶えたよ…。』
『……敦…。』
『……だから、一緒に帰ろう…。俺には室ちんが必要なの…。側に居てくれないと、ダメなんだ…。』
『……っ…あつ、し…』
グレーの瞳からポロポロと涙が流れ落ちて、紫原は細い身体を抱き寄せた。
『……ずっと待たせてごめん…。大好きだよ…辰也…。』
『……敦…、俺はずっとその言葉を待ってたんだ…。』
頬を濡らしながら、幸せそうに微笑むと、大きな身体に、そっと腕をまわした。
「……それで、氷室さんは無事にお前の元に戻って来たと言う訳だな…。」
「……うん、まぁそう。…でもさ、時々室ちんがまた何処かに行っちゃうんじゃないかって、不安になる…。」
「…言葉では伝えているのだろう?」
「…うん、ちゃんと好きだって言ってるし、なるべくくっ付く様にしてる…。」
「…なら、問題無いのだよ…。…それでも心配なら、指輪を贈るといい。」
「…指輪?」
困惑した顔を緑間に向けると、緑間は指輪の嵌る左手を掲げた。
「…結婚指輪だ。…小さなリングだが、これには大きな効果と意味があるのだよ…。」
「…効果と意味って…?」
「…嵌めた相手に、自分は夫、又は妻のものであるという意識を常に持たせ、他人からは人のものであるという警告になる。」
「………どういうこと??」
「…つまり、簡単に言うとだな…氷室さんと紫原は愛し合っているから、他人がアプローチをしても無駄だ、と知らせる効果があるのだよ。」
「…ふ~ん…。…それあげたら、室ちん喜ぶ?」
「…結婚指輪をもらって喜ばない嫁はいないのだよ…。」
緑間は左手の薬指に嵌るリングを指でなぞった。
「……なら、俺も室ちんに指輪あげる。」
「……それがいいだろう。氷室さんもきっと喜ぶのだよ。」
頷き、少し間を置くと「……さて、」と言って緑間が立ち上がる。
「…少し長話し過ぎたのだよ。…そろそろ和成達を迎えに行かなければ、ずっと買い物していそうだ。」
「……そ~だね…。室ちん買い物長いから…。」
そう言うと、紫原ものっそりと立ち上がって嫁達の元へ向かった。
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