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襲われるとは。
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「まさか、志真。襲われるって暴力振るわれるって思ってない?」
黙って頷く。
「いやね、志真ちゃん。襲われるっていうのは、そのままヤろうと思ってるんだよ、相手は。」
ヤる?……殺る?!
それは、まずい。暴力どころじゃないじゃん。生命の危機じゃん。
やばいね、それ。
「わかった?志真。気をつけろよ。」
「うん。気をつけ過ぎる。」
まだ死にたくない。
俺は、とりあえず大人になって、人生を謳歌する予定がある。今、ここで人生が終わるわけにはいけない。
「なあー。志真は、編入生試験っていうか、受験?何点くらいで合格したの?」
受験は、俺が受けようと思っていた学校の中で、一番ここが高かった。
本当は、予定に無かったが、受験勉強をした。
元々、頭はいい方だった。全く勉強をしてなくても、学校でやる勉強くらいは、頭にすんなり入ってきた。
受験の後、合格発表があり、この学園は親切にも点数を教えてくれた。
「うーん、390点だった。」
「……はっ?」
衛の目が点になる。
「え?」
「何、志真、お前、頭良いの?」
頭良いのかな?
「多分。頭いいと思う。」
「何それー。ムカつくー。俺、進級試験ギリギリだったのに!」
どうやら、衛は中等部からの持ち上がりらしい。
もしかして、ずっとここの学園にいるのだろうか。
夢野衛。ん?……夢野。
「ねえ、衛。」
「何?志真ちゃん。」
まだ、点数のことがショックだったのか、恨めしそうに俺を見てくる。
だけど、俺はそれより気になることがある。
「この学園ってさ、金持ちが多いじゃん?」
「まあ、施設維持とか大変だしね。わりと資産があるところの人が多いよ。」
「じゃあさ、衛は?」
「俺?うーん……まあまあだよ。それよりさ、志真、片付け途中だったでしょ?ごめんね、俺そろそろお暇するよ。明日、一緒に行く?」
衛は、何だか無理矢理話を曲げた。
話したくないのかな。
俺は、わりと察しの良い方だ。そして、あまり話したくないことを、無理矢理聞きたいわけじゃない。
それに、俺は衛がいい奴だってことを、この短時間で知ってしまった。出来ることなら、これからも仲良くしたい。
「うん。一緒に行こう。」
「なら、明日8時にドアの前でいい?クラス分け発表もあるし、いつもより早めだけど。」
なるほど、寮生活ってことは、結構ギリギリまで寝てられるってわけか。ああ、なんかさっきからこの学園に来て良いことないって思ってたけど、それは良いことじゃないか。
「わかった。……あのさ、衛。俺、衛がいてくれて良かった。何にもこの学園のこと知らないし。実はちょ、ちょっとだけ……寂しいって……思ってたんだ。あ、ありがとう。」
最後の方、すこし恥ずかしくなって、小声になってしまった。
衛は、またもや目を見開いたが、ニッコリと笑った。あ、俺、衛の笑顔好きだわ。
俺に近づいてきた……と思ったら、衛の顔が俺の顔に近づいてきた。そして、そのまま衛の口が俺のおでこに触れる。
え。
「じゃね、志真。」
衛は笑顔で出て行った。
俺は、おでこを抑えた。
そして、何も余計なことを考えないように、さっき自分が思いついたことの、正解を導こうと、キッチンへ向かった。
キッチンにある水筒のマークを見た。
『YUMENO』
きっと、衛は魔法瓶を作ってる夢野っていう会社の子供だ。
そんなお坊ちゃんの衛だが、俺に困惑を残して去っていった。
明日もきっと衛は笑う。
志真は不思議な気持ちに包まれていた。
志真は、襲われる、の意味を正しく理解していない。
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