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入学式。
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廊下に出て、職員室に向かっているらしい担任の後ろを黙ってついていく。
寮から来るときも思ったんだけど、この学校。迷路か。
いちいち広いがため、迷路のように複雑な校舎になってしまっている。
よくみんな、何も文句を言わずに、過ごしてるよな。
俺の前を歩いていた担任が、いきなり立ち止まって、俺の方を向いた。
「お前さんさ、これからどこに行くんですかー?とか、先生名前はなんていうんですかー?とかないわけ?」
「……はい?」
何、ふざけたこと言ってんだ、このクソ担任は。
「いやー。お前って変わってるよな、って思ってさ。」
俺は、あんたがふざけてるよな、って思うさ。
「まあ、いいや。俺は、浜口晃(はまぐち あきら)ね。下の名前で呼んでいいぞ。俺も下の名前で呼ぶから。」
「あの……浜口先生。あの、下の名前で呼ばないでください。な、馴れ馴れしい。」
「……ふーん。ま、いいや。勝手に呼ぶし。とりあえず、今なんで職員室に向かってるかというと。お前が、なんとまあ、新入生代表挨拶をするからだ。」
はい?
新入生代表挨拶?何だそれ。
てか、それ入学式でやるの?入学式、もうすぐ始まるんですけど……
もう、俺、この学校の色々なことについていけません。
「だって、お前、試験であんなに高得点なんかとるんだもん。編入生のくせにA組に来ちまって。言っとくけど、編入生でA組なのお前だけだからね。」
さっきから思ってたんだけど、この浜口さん、重要な説明をしてくれない。
一番知りたいこと教えてくれないってどういうことなのさ。
まず、A組って何。編入生は、普通A組には入れないのか。
うーん、頭の良い順ってわけでは無さそうだよな。だって、衛は自分で頭悪いって言ってたし(言ってはないけど、ギリギリだって言ってたし)。
ていうか、あのクラス俺以外、全員持ち上がりなの?なんなの。
「あのな、高等部のクラス分けは、学園への寄付金順だ。つまり、金持ってるやつがA組に来るの。お前は、例外。お前は、頭良いから特別にA組。あとの編入生は、ほとんどがC組になってる。」
「……そう、ですか。」
なるほど。
確かに、衛と同じクラスで良かったけど、それって他のA組の人が、納得いかないんじゃないかな。
そうか。さっき、小動物たちが俺を怪訝な目で見たのは、浜口先生が俺を編入生って、呼んだからか。
あーやだやだ。クラスでアウェーってどういうことだよ。
「とりあえず、新入生代表挨拶の台本職員室にあるから、取りに行くぞ。」
「あの……俺、人前で話すとか……無理なんですけど。」
そう、俺は初対面がダメだ。
大勢の前なんて、以ての外だ。
倒れる。絶対に倒れる。
「大丈夫、大丈夫。なんとかなるよ。」
本当……本当に、クソ担任だ。
それから、職員室に行って、原稿を手渡されて、講堂に強制連行された。
俺は、隙あらば逃げてやろうと考えていたのだが、このクソ担任は、こういう時に限って、俺を逃してはくれなかった。
なんだよ、こういう時にテキトーになってほしいんだけど。
講堂に入ると、想像以上に人が多くて、マジで倒れそうだった。
俺は、舞台袖で待機隊。
そして、入学式が始まる。
俺は、逃げたい。それだけ。
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