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生徒会の皆さま。
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「これから、緑ヶ丘学園高等部入学式を始めます。」
時というのは、無情だ。
司会の先生がどんどんと進めていく。
おいおい、浜口さん。俺、本当に無理だよ。
さっき渡された新入生代表挨拶の原稿を見た。
まあ、文章は至って普通である。であるのだが、少し長い。噛まずに言える自信も、みんなの前で喋れる自信も何もない。
「次は、生徒会長。宮園会長より挨拶があります。よろしくお願いします。」
司会の人がそういったやいなや、講堂に響き渡らんばかりの悲鳴。黄色い声。
俺は、思わず眉間に皺を寄せて、耳を塞ぐ。
おいおい、今度は一体何だって言うんだよ。
「新入生の皆さん、入学おめでとうございます。___」
生徒会長らしき人が口を開くと、さっきまできゃーきゃー言ってた奴らは、シーンと静まり返り、黙って会長の挨拶を聞いている。
聞いているというか、噛みしめている?涙を流している人を見つけて、俺はギョッとする。
この人たち、頭大丈夫かな。
会長は、至って普通の挨拶文を読み上げて、最後にニッコリとうさんくさい笑顔を見せて、壇上から下りた。
俺が待機している方とは、逆の袖に消えていった。
生徒会長の宮園先輩か。
何だかわからないけど、関わらないに越したことは無いだろう。
凄く面倒そうだ。
「続いて、新入生代表挨拶。新入生代表、唐澤志真。」
あー、本当にするの?
もう嫌なんだけど。
そう思いながら、壇上に上がる。
なんか、沢山の目がこっちを見てる感がある。しかも、心なしか少し騒ついてる……気がする。
いや、ただ単に、生徒会長の挨拶の時が静かだったからかな。
とりあえず、緊張しながら、台本に書いてあることをそのまま読むことにした。
「本日は、私たち新入生のために、素晴らしい入学式を開いていただき、ありがとうございます。___」
出たしで躓かなければ、あとはスラスラと読むことが出来た。
新たな唐澤志真の機能、『本番に強い』が追加された。
へー。俺って意外と本番に強めなんだろうか。いや、よくわからないけど、やっぱり大勢の前なんかもう二度と出たくないものだな。
もう一回で十分だよ。
今すぐ、自分の部屋に、マイスウィートルールに帰りたい。何だか、どっと疲れたような……。
入学式は滞り無く終了した。
俺は、たった1時間の出来事に、1日の約半分の労力を持っていかれた気がしてならなかった。
いや、冗談抜きで、俺疲れてる。
講堂から生徒が退場する。
俺は、まだ退場出来なくて、色々な先生に、良かったよ、緊張したでしょ、などの優しい言葉をかけられ、(どこかの担任の●口さんとは大違い)さらに、学園長先生にまでお声をかけていただき、退場できる状態になったのは、ほとんど生徒が講堂にいなくなった後だった。
やっと、帰れる。
あー、荷物教室だ……一度、教室に行かなくては。衛、待っててくれてるかな。
なんて、考えながら、講堂をあとにしようとした時、後ろから誰に肩を叩かれた。
振り向くと、そこには5人の生徒がいて……その、なんていうか……皆さんお顔がよろしかった。美形?モデル?
嫌味にしか見えない、何とも女の子にモテそうな方々。
その中には、さっき壇上に立った生徒会長がいた。
ていうことは、この方々まさか……
「生徒会……」
「そう!あったりー。シマたんあったまいー。」
妙にテンションが高い、背丈が俺より低いこれまたショタ好き女性にウケそうな顔立ちのお方。この人は、一体誰だ。
そして、シマたんって何。
「こらこら、ミケ。唐澤くん困ってるでしょう。」
「でもさ、ホントに顔普通だよね、この子。」
「なんで、新入生代表挨拶なんかしたんだろうね。」
「「しかも、A組ー」」
「……頭いいからだろ。お前たちそろそろ、静かにして。」
いや、すみません。この状況というか、この会話を説明できません。何故なら、俺自体が、この状況を理解できないから。
小さい人と、メガネの人と、双子と、宮園先輩。
いや、わかってる情報が、生徒会の執行部ってことと、宮園先輩だけってもうどうすんのさ。
あーダメだ。頭痛い。俺、さっきの大仕事でかなり精神的ダメージがありまして。その、からかうとかそういう類のものでしたら、明日でもなんでもとりあえず今以外ならいつでも聞きますから、お部屋に返してください。
……という俺の心の叫びが聞き届くわけがなく。
「とりあえず、自己紹介していいー?シマたん!」
小さい人……余計なこと言わないでください。
生徒会の皆さまから、逃げることは出来ないらしい。
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