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志真くんと非平凡な日常
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入学式から一夜明けた。
あの後、テキトーにあしらって、誤魔化しながらあの生徒会役員さまたちから逃げるようにして教室へ向かい、待ってくれててた衛と一緒に寮へ帰り、お風呂に入って、ご飯を食べて(自作)、歯磨きをして、とっとと寝た。
ちなみに、ただいまの時刻午前8時で、当たり前のように衛が、リビングのソファーに座ってる。
衛が10分前に起こしに来てくれた。
俺は、制服に着替えながら、昨日の出来事を思い出し、衛に言うべきかどうか迷っている。
衛に言ったら、なんて言われるだろうか。
洗面台で髪を梳かして、さらに歯磨きをする。顔も洗う。特に、ワックスつけたりはしない。ベタベタするのが好きじゃない。
リビングに行くと、衛が携帯をいじっていた。
「なあ、志真。朝ごはん食べないの?」
「うん。必要ないから。」
そう、俺は朝ごはんは食べない。結構そのまま昼ごはんも吹っ飛ばすことも多い。つまり、1日1食があるってこと。土日祝日は大体そう。
衛は、あり得ないという顔で俺を見てきた。
「お前、死ぬよ。」
「いや、死なないから。」
それ以上、衛は言ってこなかった。
そして、俺は未だに衛に昨日の生徒会とのやりとりを言おうかどうか迷っていた。
だけど、結局、ここで言うのはやめた。
もう少し事態が動いたらでいいだろう。
そして、俺らは揃って部屋を出て、校舎へ向かった。
衛は、A組で人気者だった。
それに比べて、俺は、衛以外のA組の人に話しかけられてない。編入生だからだろうか。
衛と仲良くしている俺に、怪訝な目を見せても、好意の目は決して見せてはくれなかった。
そんな中、最も起こってほしくないことが、昼休みに起こった。
「悪い、志真ちゃん。俺、今日昼休み用事があるんだわ。」
「わかった。いってらっしゃい。」
昼休みが始まると、衛は忙しそうに教室を出て行った。部活にでも入ったのだろうか。
『MCRK』が好きとか言ってたから、軽音部にでも入ったのだろうか。
どっちにしても、入学後、初のお昼休みは、どうやら教室でボッチらしい。
まあ、別にいいのだけど。
みんな、俺のこと気にしてないようだし。
一応、用意していた昼ごはんがあるのだが、食べる気になれず、机に突っ伏した。
あー、眠いかも。
陽がちょうどよく俺に当たっている。
あ、眠れるわ。きっと、衛が起こしてくれる。
そう思って、微睡んでいた時、それは起こった。
突然、クラスの誰かが悲鳴をあげたのだ。
俺は、何事かと目を覚まして、悲鳴が聞こえた後方のドアを見るために振り向く。
「あっ!シマたーん!いたいたー。」
今、会いたくない人トップ5に入る人が、手を振りながら、こっちに向かってくる。
夢だと言ってくれ。
「あ、ミケ。勝手に下級生の教室に入っては……」
もっと力強く注意してくれ、副会長。
もう、三池先輩は、俺のすぐ側まで来てるから。
なるほど、悲鳴の原因は、あんたたち2人か。
やれやれ、と言いながら、副会長も教室に入ってくる。いや、入ってくるなや。
クラスの奴らは、相変わらず遠目に、俺たちのことを見ている。好奇心というものはすごいもので、俺たちは一種の見せ物だ。
「あの……何の用ですか。」
俺が、喋るとクラスが騒めいた。
ちらほらと聞こえる、あの編入生は生徒会の方々とどのような関係なんだろう、という疑問の声が。
出来れば、ここから抜け出したい。
「いや、ほら昨日の話だよー。シマたん、どーしても、生徒会に、は___」
「三池先輩!こ、ここじゃ、何ですし、場所変えませんか?」
「ミケ、私もそうした方がいいも思います。」
ナイス、副会長。察しが早い。
ここで昨日の話の続きなんてしてみろ。俺は、明日から不登校になるぞ。生徒会役員全員訴えてやる。
俺と2人は、教室を出た。
だけど、人目を気にしなくて済む場所なんて、この学園にあるのだろうか。
俺の疑問を他所に、2人は何も言わずに、どこかへ向かって歩いている。
俺は、それについていくだけ。数歩離れて。
とにかく、2人は目立つ。
というか、声掛けられすぎ。
2人に向かって、こんにちは、今日もお綺麗ですね、今度一緒にうんたらかんたらと、色々な声を周りは掛けている。
俺はとりあえず目立たないように、黙って2人についていった。まさか、俺がこの2人と一緒に歩いているなど、他の人は思っていないようだ。
良かった良かった。
だけど、そう思ったのも束の間。
俺たちがたどり着いたのは、校舎の奥の奥にある随分と丈夫そうな目立ったドアがある、生徒会室と書かれた金の文字のプレートがある部屋だった。
誰がどう見ても、生徒会室。
俺が昨日から最も関わりたくないと言ってきた人たちの巣だ。
2人は躊躇なく、そのドアを開ける。
「かいちょー!シマたん連れてきたよー。」
待った。ちょっと待った。
もしかして、この2人初めからここに、俺を連れてくるつもりだった?
この三池先輩。侮れない。何も考えてなさそうで、もしかしたら、凄く先を見据えてるんじゃないだろうか。
「「本当に、来たんだー。」」
あー、双子もお揃いで。
「意外と早かったな。もっと、かかると思ったんだが。」
「俺の手にかかればー、こんなもんよ!」
自慢気に言わないでください。
本当、俺の中での三池先輩の印象は、怖い、に決定だ。
本当に三年生なのか、とか思って申し訳ない。この人、確実に俺より人生経験積んでます。
きっと、脅しとか得意ですよ。はぁ。
「あの……俺、帰ります。」
そう言って、回れ右をしたが、そこには副会長がいるわけで。
「あなたを帰すわけには行きません。会長の話を聞いてください。」
私に拒否権ないのでしょうか。
「なあ、唐澤。お前、なんで生徒会に入りたくないわけ?」
何でって。
「別に、お前に不利になることはないと思うけどな。生徒会と言えば、色々な権力あるし。」
いやもう、俺に不利なことばかりじゃないか。
「俺……目立ちたくないんです。」
俺が、そういうとその場にいた全員が目を見開いた。
なんで、そんなに驚くの。俺、驚かすようなこと言っただろうか。
「え。お前、何言ってんの?」
「もう、十分目立ってるじゃん。」
「「新入生代表が、編入生だーって」」
やっぱりか。やっぱり、目立ってしまってたのか。でも、それはそこまで大きく目立ったわけじゃない。生徒会なんかに入ったら、おしまいだ。もっと目立ってしまう。
「へ、平穏な、平凡な、生活を、求めて……ます。」
俺が言うと、みんな揃って少し笑って言った。
「無理だろ(よ)」
無理にさせているのは、あなたたちだろうよ。
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