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勝負
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俺は、悩んでいた。
この人たちが、何の理由も無く俺を勧誘しているわけでないことがわかった。
俺がもし、凄い目立ちたがり屋で、何かをやり遂げたい意志が強くて、みんなの人気者的位置なら、絶対にこの勧誘を受けたはずだ。
でも、残念ながら、俺は目立ちたがり屋ではない。何かをやり遂げたい意志もない。みんなの人気者的位置にも、もちろんいない。
だけど、俺にも思うことがある。
ただ、何も考えずに断れるほど、強い自分で無い事は、わかっている。
あー、どうしよう……
「ねえねえ、宮ちゃん。多分、そんな言い方じゃ、シマたんは、きっと入ってくれないよー。」
うん。もう、あれだ。
こんな迷うくらいなら、きっともし生徒会に入っても、中途半端な仕事をしてしまう。
それは、俺的プライドが許さない。
「あの……俺やっぱり__」
「だからさー、宮ちゃん。こうしようよ。新入生歓迎会で、シマたんがおれたちの誰かの宝物見つけられたら、とりあえず今回の話は無しってことにしない?」
三池先輩が、俺の言葉に被せてよくわからないことを言い出した。
宝物って何?
まず、新入生歓迎会って何?
三池先輩の言葉に、会長は意表を突かれたよつな顔をした。
「あ!ミケやん、それナイスだよ。そしたら、4月中に全てわかるよ!志真くんはきっと、見つけられないし。」
兄先輩、三池先輩を褒めるより、俺に色々説明してくれ。
そして、あまりに俺に不利な話だったら、俺はそれすらも受けずに、断る。
「新入生歓迎会ってことで、生徒会・風紀委員主催の、宝探しをするんですよ、うちの学園は。生徒会と風紀委員の執行部メンバーの宝物を、新入生及びその他全校生徒で探すってゲームです。全校生徒でやることによって、同じクラスや他クラス、さらには先輩後輩などの親交を深めるのが目的です。」
そうそう、やっぱり困った時の女神副会長だよな。俺は、そういう説明を望んでいたんだよ。
でも、宝探しゲームってどうよ。
俺が中学生の入学後の新入生歓迎会は、なんか上級生が校歌を歌ってくれて、部活動紹介をしてもらって終わりだったような。
やっぱり、私立は違うのかな。
俺には遊びにしか見えないんだけど。それでいいの?
「あれ楽しーよねー。おれ、毎年楽しみだもん。」
三池先輩は、かなり気に入ってるようだ。
そうだった。この人たち、忘れてたけど金持ち集団だった。あれだ。金持ちには、庶民の遊びが楽しいんだよな。だって、宝探しなんて、小学校の時に一度やったきり、俺はやってないし、そんなに楽しいとも思えない。
それに俺、わりと探し物を見つけるのは得意なんだよね。
井上陽●の「夢●中へ」歌いながら探せるし。
「唐澤がそれでいいなら、別に俺は構わないが。」
みんなの目線が、俺に集まる。
よく考えてみれば、もし宝探しで、俺が宝物を見つけられたら、すんなり断れるじゃないか。見つけたんで、悪しからずって。
そしたら、余計なこと考えずに済むし。
それに、俺は探し物を見つけるのは得意な方だ。
それに、兄先輩は、さっき俺にはきっと見つけられない、と言っていたが、それは俺の実力を知らないだけ。
俺は、余計なことを言う癖がある。
探し物は得意とかなんとか言って、条件の難易度を上げられる前に、受けて立つと言おう。
「いいですよ。その宝探しで俺が宝物見つけられたら、今回の勧誘の件は無しにしてくれるんですよね。」
その場にいた俺以外の人たちが、目を丸くした。
まさか、俺が受けて立つとは思わなかったらしい。
勝負事は、好きだ。それに、負けず嫌い。
会長は、ニヤリと笑って言った。
「よし。男に二言はないな?もし、お前が宝を見つけ出せなかったら、大人しく生徒会に入れよ。でも、もしお前が宝を見つけ出せたら、今回の勧誘の件は、無しにしてやる。今回のはな。」
ん?
あれ。
あ、でも、そうなるか。
俺は、とんでもない失敗というか、上手く口車に乗せられたというか、とにかくとんでもないことをしてしまった。
“今回の”ってことは、もう勧誘をしないということではない。
となると、もし俺が勝っても、またどこかの機会で勧誘されることを、否定できないってことか……
やられた!
だから、こういうの得意そうじゃない弟先輩は、今日は、口数少なめだったんだ!
弟先輩に目をやると、こちらもまたニヤリと笑ってきた。
これ、初めからこうする予定だったんじゃ……
あー、完全に上手い方向に持ってかれた。
やっぱり、この人たちとは関わり合いになりたくない。
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