アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
お前、そういう奴だろう。
-
俺は、思わず目をそらす。
なんか、わかんないけど、目をそらしてしまった。
すると会長は、何を思ったのか、俺の方に近づいて来た。
俺のすぐ近くに移動してくると、そのまま、また前を向いた。
なんだ、なんだ。
なんで、黙って近づいてくるんだ。
さっき、ミケ先輩のこともあるから、少しだけ警戒している。ミケ先輩、俺、ちゃんと警戒してるよ。
だけど、相変わらず、会長は何も言ってこないので、また会長の方を見た。
すると、また目が合う。
待って。なんで、こんなに目が合うの。
今度は、目をそらさないでいると、会長の顔が近づいてきた。
まずい。なんか、非常にまずい展開になってきた。
すると、会長はニヤリと笑った。
「お前、やっぱり、目少し灰色っぽいよな。茶色だけど、ふちの方、少し灰色だ。しかも、左目だけ。」
はい?
確かに、俺の左目は少しだけふちの方が灰色だ。基本は茶色だから、よく近くで見ないとわからないけど。
普段は前髪も少し長めだから、気付く人は少ない。きっと、衛も気づいてないと思う。
なるほど、会長は俺の目が気になってたわけですか。
「よく……わかりましたね。」
「ああ、少しおかしいと思ったんだ。それ、自前だよな。」
「はい、もちろん。生まれつきですよ。」
「そうか。俺の髪も生まれつきだ。」
「えっ。」
会長の髪は、色素がかなり薄かった。金髪ではないけど、クリーム色くらいの髪の毛。てっきり染めていると思っていたから、なんでそんなに言動に合わず明るい色にしてるのだろうと、疑問を持っていたのだ。
俺の髪は真っ黒。会長と比べるとさらに黒く見える。
「母親が日本人じゃない。」
「へー。」
正直、そういうデリケートな話は聞きたくなかった。
反応に困るからだ。
というか、もう俺の目のことがわかったなら、離れてほしい。
笑っていた会長が、いきなり真剣な(怖い)顔で、さっき俺の目を見ようとした時ぐらいの距離まで、また顔を近づけてきた。
俺は、まだ見るのだろうか、と目を開けたまま、なるべく瞬きをしないようにした。
でも、何だか本当に近くなってきた。このままじゃ……
「おい、逃げないのかよ。このまま、するぞ。」
俺はそれを聞いて、慌てて会長から離れる。
なんで、こういう人が多いんだよ。
湯船が揺れる。
俺は、何も言わずに会長を見た。会長は、俺から目を離さずに、まっすぐとこちらを見ていた。
俺は、また目をそらした。
「お前さ、さっきミケになんか言われてなかったか?」
「な、なんで!」
「ミケが昨日、お前に明日会いに行く、と言っていた。俺も他の生徒会メンバーも、お前の鈍さと天然ボケさには気づいていたけど、まさか、ここまでとはな。で?ミケには、なんて?」
鈍さと天然ボケさ……
なんか、自分で言うのはいいけど、他人に言われるのは嫌だ。ムカッとくる。
確かに俺は鈍いかもしれないけど、決して天然ボケではない。ミケ先輩も言ってたけど、俺は違う。
会長は俺が言うのを待っていた。
「……俺の誤った解釈を直してくれました。」
「どんな?」
「……俺は、襲われる、って殺されることだと思ってましたから。それを、ミケ先輩は違うと言って、正しい答えを教えてくれました。」
「そうか。やっぱり、お前は天然ボケだな。なんで、そうやってミケが言った警告を無視するような行動するんだよ。」
ミケ先輩の警告を無視するような行動?
さっき会長から逃げなかったことだろうか。でも、あれは不可抗力というか。会長が、俺の目を見てると思ったからで……
「お前は、わかってるのか。俺だって、お前を気まぐれで犯すかもしれないんだぞ。それなのに、こんな裸になるところで、2人きりになる状況になってる。」
俺は、何も言い返さなかった。いや、言い返せなかったんだ。会長が言った通りだ。
まあ、会長なんて、昨日一昨日出会った仲だ。何かがないと言い切れる保証はなかった。
それなのに、今。その距離15cmで向かいあっている。しかも、全裸で。
「お前のそういうところは、もう治んないかもしれないな。まあ、そしたらそうで、違う方法でなんとかしようと、自分で意識しろ。そんなんじゃ、お前、知らない間に周りにいる奴傷つけるぞ。お前、そういう奴だろう。」
知らない間に周りにいる奴を傷つける。
その時、さっきのミケ先輩の別れ際の泣きそうな顔が頭に浮かんだ。
あれは、俺がきっとミケ先輩をあんな顔にしたんだ。あれは、俺のせい。
意識しろ。
今日だけで2回もそう注意された。
俺が黙ってると、会長はため息を吐いた。
そして、俺からどんどん離れていき、結局、湯船から上がってしまった。
「なあ、唐澤。これは、俺からも警告だ。お前、気をつけた方がいい。お前が思っている以上に、周りはお前を見てるぞ。」
そう言って、会長は大浴場から出て行った。
俺は、その場から動けなかった。
俺、さっき2回目に会長が近づいてきた時、そのまま……キスされるかと思った。
ミケ先輩のこともあったからだと思うけど、少なくても、そういう方向になるかもしれないと、頭でよぎった。
でも、俺は逃げなかった。
確かに、会長がまた俺の目を見たかったから近づいてきた、とは思ったけど、その他にもうひとつ。
俺は、会長に見惚れてた。いや、正確には、会長の目に見惚れてた。会長の目は、真っ黒だった。その真っ黒な目に見惚れてしまったんだ。一瞬だけ……
俺は、普段じゃありえないくらい長風呂をして、大浴場を出た。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
20 / 190