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抱きたいと有名の子が、上半身裸でやってきた。
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俺、夢野衛は、嫌な予感がしてならなかった。
何故なら、さっき、志真の携帯にメールをしたのだが、返ってこないことだ。
あいつのことだから、寮に帰って寝ているのかもしれないし、携帯を見ていないだけかもしれないけど、どうも嫌な予感がする。
俺は、とりあえず急いで、寮に帰り、志真の部屋へ訪ねてみようと思った。もしそれで、ひょっこりと出てきたら、俺の嫌な予感は、ハズレだ。
そう思い、校舎の廊下を歩いていると、誰かが走ってきた。
ん?
よく見ると、あの子……
「あっ!衛くん!助けて!」
おっ。
今、可愛くて是非抱きたいと有名な、1年C組の安田悠里(やすだ ゆうり)くんじゃん。
なんていうか、恰好が視覚的にダメ。
上半身裸って……
なんて、さっきから紹介する理由は、俺がこいつと仲が良いから。俺は、初等部までC組にいたから。
「あれ。悠里、どーした。お前、上半身裸って襲われたいのか___」
「もう襲われたから!逃げてきたの。ねえ、衛くん、風紀委員室一緒に行って。」
いやいや、色々ツッコミたいところかあるけど、聞き捨てならないことが一つ。
俺は、悠里にとりあえずブレザーを貸して、上半身を隠させた。(このまま、風紀委員室に行くのはまずい。)
そして、今来た道を逆走して、風紀委員室へと向かった。悠里は何故か走っているので、俺も一緒に走るしかなかった。
「なあ、悠里。お前、襲われたって……」
「うん……ちょっと、やらかした。」
こういうところがある。こいつ、凄く方向音痴なんだ。今も、俺がいなかったら、風紀委員室なんて辿り着けない。
場所は頭に入ってるそうだ。でも、イメージが出来ても、辿り着けない。もう、なんか末期の方向音痴的な。
「でもね!助けてもらっちゃった。」
ん?
「助けてもらった?」
なるほど。
助けてもらったから、未遂で終わったと。でも、そしたらなんで今、俺たちはこんなに急いで、風紀委員のもとへ向かっているんだ。
俺は、立ち止まる。
風紀委員室は、この廊下を真っ直ぐ行った突き当たりにある。
「どうしたの?」
「ねえ、悠里。誰に助けもらったの?なんで、俺たちこんなに急いでるの。」
嫌な予感しかしなかった。
「あのね……新入生代表の子。あの子だと思うんだけど、僕あんまり遠くからしか見てなし、なんか声しか聞いてないから、わからないけど、多分、そうだと思う。逃げろ、って言われて、無我夢中で逃げてきたから。」
嫌な予感的中だ。
志真ちゃん。何、面倒ごとに巻き込まれてるのよ。
「あ!でもね、何だか雰囲気が違ったから、別人かも……ごめんね、確証はないんだ。」
なんか、曖昧だな。でも、調べた方がいいし、もし志真なら、助けに行かないと。
俺は、くるりと方向転換をした。
「悠里!風紀委員室は、ここを真っ直ぐ進んで突き当たり!見えるだろ?真っ直ぐ進め!」
俺は、そう言うやいなや、急いで志真のもとへ向かった。
後ろから、悠里がなんか言ってるけど、全く聞こえなかった。志真が、襲われてるかもしれないと思うとゾッとした。
だけど、それ以前に、俺のパニクった時の状況判断の悪さにもゾッとした。
悠里、どこで襲われたんだ!
まあ、大体はE組の奴らが現れそうな、第三寮付近だな。
第二寮を越えて、第三寮方向へ向かって、すぐほどのところで、俺は驚くべき光景を目にした。
もう、息も上がってたんだけど、思わず息を止めてしまうような光景。
8人の男たちが、気を失って倒れていた。
それも、目立った外傷はなく、ただ眠るようにお腹の方を押さえて、倒れていた。
そして、男たちの近くには、悠里の物と思えるブレザーとワイシャツが落ちていた。
俺には、状況が全く理解できなかった。
「志真っ!」
ハッと思い、周りを探すが、志真の姿は無かった。
確かに、男たちは誰かにやられたんだろう。だけど、一体誰が……
俺の中で、いくつかの仮説がたった。だけど……信じられない。
俺は、パニックになっている心を、何とか落ち着かせて、携帯を取り出して、電話をかけた。『唐澤志真』アドレス帳からそれを探して、発信のボタンを押す。
……出ない。
俺は、電話を切って、違う電話番号にかけた。
「……もしもし、俺です。……すいません。……第二寮から第三寮へ向かって数メートルです。8人です。もう倒れてます。……はい。お願いします。」
俺は、その場に8人を残して、第一寮へと向かった。
志真の部屋の前に来た。
ドアを叩く。
志真からの返事はなかった。
俺は、もう一度とドアを叩いた。
志真は、ノックの音に気づかないことが結構ある。最低でも3回はいつも叩く。
もう一度ドアを叩いてる途中で、ドアが開いた。
出てきた志真の髪は濡れていた。
シャワーを浴びたようだ。
「あれ?衛じゃん。用事は済んだの?」
何にもなさそうに、いつも通り、志真は言った。
そして、とりあえず入りなよ、と促してきたが、俺は中には入らなかった。
「なあ、志真。今日、俺の友達が、第三寮付近で襲われた。」
「えっ。その人、大丈夫?やだな。やっぱり、第三寮には近づきたくない。」
本当に驚いたように、志真は答えた。
その表情に、動揺はない。
「お前さ、今まで何してた?」
「今まで?シャワー浴びてたよ。」
「その前は?」
「今日は、真っ直ぐ寮に帰ってきたけど……どうしたの?」
いつも通りの顔でそう答える。
いつものような志真。
嘘を吐いたようには、見えない。
「実は、そいつ、襲われたけど未遂で終わったんだ。助けられたんだって。」
「それは良かったね!」
「それさ、お前なんじゃないの。そいつが、お前だって言ってた。」
沈黙。
無表情。無表情で、志真は俺を見つめてきた。
次に、志真はなんて言うんだろう。
俺は、志真からの答えが怖かった。
では、俺は志真になんて答えてほしいんだ?
志真が表情を崩した……笑った。
「ふふっ。そんなわけないじゃん。その人、見間違えたんじゃないの?俺、第三寮には近づきたくないし、今日は部屋にいたよ。」
初めて俺の前で志真が笑った。
志真が笑ってるところがずっと見たかった。
でも、これは俺が望んでるような笑顔ではない。
「ねえ、衛。やっぱり、廊下じゃなんだし、部屋に入らない?中で話そうよ。」
「俺、たまに志真がわからない。」
つい出てきた言葉に、志真は気に留めずに笑って頷いた。
「俺も。俺も、わかんない。」
それは、俺がか?
それとも、お前がか?
志真は相変わらず笑顔だった。
志真の笑顔は、一種の拒絶に見えた。
これ以上、詮索は意味がないだろう。
俺は、志真と同様に笑った。
「ごめん!志真ちゃん。俺、これからまた用事があるだ。明日、また朝迎えに来るから、野菜ジュース飲んでよ?」
いつものように言う。
すると、志真もいつものような表情に戻った。
「うぅ……わかったよ。飲むよ。じゃあ、また明日ね。」
「じゃあな!」
志真は、ドアの向こうに消えていった。
俺は、ため息をついた。
志真。
お前が、ここにいることで、悠里を助けたのがお前だって確信したよ。
お前は知らないかもしれないけど、お前は思ってる以上に周りに知られてる。悠里がお前をいくら切羽詰まった状態だからって、見間違える筈がないんだ。
だから、お前が無事にここにいる時点で、お前が悠里を助けたって何よりの証拠なんだ。
「隠したいくらいのことなのか。秘密でいいよ。」
俺は、お前が傷つかなければ、それでいい。
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