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貸し借り
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山河に連絡したら、本当に冗談抜きで、秒単位で返事が来た。
なんて言うんだろう。気持ち悪かった。(ヒドイ)
今会えないか。
と送ったら、
いいよ。告白?
なんてふざけたことを言ってきたので、
第二寮の前で。
と盛大に無視して送ってやった。
俺が西棟から第二寮の前に行くと、そこには既に私服に着替えた山河がいた。
授業が終わり、そのまま寮に帰ったのだろう。
山河は、D組のくせに、第二寮を使ってるんだから、特別扱いみたいで気分が悪い。
もう帰っていたのなら、第一寮まで来させれば良かった。失敗。
「あれ?衛は、いないんだ。」
開口一番がこれだ。
どれだけ俺と衛がいつも一緒にいると思ってるんだ。
「衛がいなくて悪かったな。」
「……志真くんってさ。生徒会の人たちの前と、衛や俺の前との態度違いすぎるよね。」
「そんなの決まってるだろ。役員のみなさまは学年が違うんだ。」
「まあ、俺も敬語よりは憎まれ口の方がいいかな。」
ダメだ。このままだと話しの主導権を握られる。
俺は、とりあえず山河に、さっき生徒会で話し合ったことを大まかに話した。
生徒会特別賞を、山河にとってほしいことも伝えた。
なんで俺が安田くんはダメだと言ったかというと、純粋に安田くんを危険な目に合わせたくないだけだ。
俺の知ってる中で、親衛隊やファンクラブに入ってないのは、衛と安田くんと山河だけだ。他はあんまり面識がない。
正直、俺は山河が誰に恨まれようと、どうにかなると思っている。実際に、こいつのバックには山河組がいる。
こいつに絡もうなんて命知らずは、いないだろう。
「志真くん、俺にまた借りを作るの?」
「致し方無い。」
俺だって、お前に借りを作るのは嫌だ。
正直、あとでどんな場面で使われるかわからないし。山河なんてのに借りを作るなんて、この世で最も避けたいことの一つだろう。
「いいよ。その生徒会特別賞に引っかかるくらい目立ってあげても。」
意外とすんなりと俺の提案に乗っかかる山河。
「俺、実際3つの競技に出るし、もともと運動神経は良い方だし、目立つなんていくらでもできるよ。」
ムカつく。
誰だよ。こいつに3つも競技に出ろなんて言ったの。自分で頼んどいて何だが、山河が簡単に目立つとか言ってるのが、少しイラっとくる。
実際、生徒会特別賞を取りたくて頑張ってる人たちに少し申し訳ない気持ちにならないわけじゃない。
でも、また変な二分化されるのは、後々めんどくさいことになりそうだ。
「あのさ、志真くん。俺がちゃんと約束通り目立ったらさ、この間の衛のテスト勉強に付き合った貸しと、今回の貸しで、1つ俺からお願いがあるんだけど?」
嫌な予感しかない。
山河のこの微妙な笑い方が嫌な予感を倍増させてる。
山河も顔がいいのがムカつく。これで、髪をちゃんと黒髪にしたら何も言わないのに。
なんで、赤髪なんだよ。
赤髪も似合ってることがさらにムカつく。
「なんだ?」
「うーん。会ってほしい奴がいる。」
会ってほしい奴?
すると、突然山河が俺に近づいて来た。物凄く早い身のこなしで。
一瞬で距離を縮められたことより、警戒してなかった自分にビックリした。どんだけ油断してるんだ。
正直、山河がこれだけ距離を縮めるのは、よくやることだ。大体は、どうでもいいことを耳打ちするためなんだけど、あんまり好きじゃないから、どうにかならないものか。
そんな呑気な考えも山河の一言で、一気に吹き飛ぶ。
「過去に志真くんに会ったことがあって、話がしたいんだってさ。」
耳元で言われた言葉に硬直する。
こいつ……どこまで知ってるんだ。
「あー。そんなに怖い顔しないで、そいつから確かにある程度のことは聞いたけど、それをこの学園の誰かに言おうとか、それで志真くん脅そうとか考えてないから。」
そんなこと言いながら、またさっきくらいの距離を取る山河。
俺は、正直言ってこいつが苦手だ。
何考えてるかわからないし、何がしたいかわからない。
「むしろ、俺は志真くんと仲良くしたいくらいだよ。だから、今回のはそいつに会ってほしいってだけ。俺の家に来てもらうことになるけど、不安なら俺も同席するけど?」
おいおい。
山河の家に行くって、山河組のところに行くってことかよ。いいのか。俺みたいな一般人がそんなところに行っても。
無事に帰ってこられるのだろうか。
まあ、この学園の寮に通っている時点で、もし帰ってこなかったら、学園が探しに来てくれるだろうけど。なんせ山河組はデカい組織だ。
でも、俺はそれ以上に……
「はぁ。いいよ。お前が同席するのは、認めない。俺は、そいつと2人で会うから。」
「おー、志真くんカッコいいね。」
茶化すように口笛を吹いて、山河が笑った。
こいつ、いちいちムカつくよな。
「お前、本当にタチが悪い。」
「いやいやー。志真くんほどじゃないよ。だって、俺にそんな恨み買いそうな役やらせるんだもん。」
どうやら、全てお見通しのようだ。
「だけど、そのタチ悪い俺と、仲良くなんてなりたいんだろ?」
「うんうん。だって、志真くんタチ悪いけど、雅樹はもっとタチが悪い。毎日俺と顔合わせようとするんだぜ。俺のこと好きかよ。」
げんなりとして山河が言う。
本当に、こいつ風紀委員長のこと呼び捨てにしてるけど、それはいいのだろうか。
名前呼び捨てって色んな人に恨み買いそうだけど、山河だから手を出さないんだろうな。
俺が会長のこと呼び捨てにしてたら、次の日に命は無いな。まあ、会長の名前わかんないけど。
「まあ、俺は雅樹なんて全然タイプじゃないけど。」
来ましたよ。この学園の特殊な考え。
なんで、男同士でタイプなんてすらっと出て来るんだ。
俺は、悠里がいいな……
なんて呟いているのが聞こえたけど、それについて追求するのはやめよう。
出来れば、知り合い同士のそういうのは、知らぬが仏と言うし。
交渉は成立したので、これ以上の長居は不要と、その場を後にしようとした時、突然、山河が真面目な顔で(今まではそこまで真面目な顔じゃなかった)、俺を引き止めた。
「でもね、志真くんが今までやってきたことを考えたら、俺よりよっぽど危険だよね。そこら辺、衛とかは知らないからさ、それ知られた時の反応怖いでしょ?」
真面目な顔をしたと思ったら、最後の問いはニッコリと笑って言うもんだから、俺はやっぱりこいつとは仲良くなれない。
「お前、明日怪我すればいいよ。」
だから、皮肉たっぷりに笑ってやると、向こうも笑ったまま、
「やっぱり、志真くんって本性隠してた方がいい。怖い怖い。」
なんて、わざとらしく肩を抱きながら言うから、盛大に無視してやった。
山河は、俺のことを多分知ってるけど、それは人伝に聞いたことだろう。
それに少しホッとする。
全てを知っているわけではない。
それは、俺にとっての励み。首の皮一枚ってところだ。
最後の山河の笑顔を思い出して、その辺にあった石を思い切り蹴飛ばした。
あいつ、嫌いだ。本当に。
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