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山河ブーム
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「今回のスポーツ大会の、生徒会特別賞は……1年D組の山河陸さんです。山河さんは、舞台に上がってください。」
あの会長が、山河のことをさん付けしてる。
それ以前に、なんだよ、この黄色い声。
いや、確かに山河は、目立ってた。
実際惚れ惚れするくらい凄いことやってた。
でも、こんな黄色い声はないだろ……
「おい、志真ちゃん。これ、想像以上だよ。良い終わり方になる。」
衛はそう言って、静かに舞台を見守っている。
山河は、会長が待っている舞台に上がる。
アイドルか……こいつは。
ちゃっかり手なんか振ってる。
でも、俺や一部の人は知ってる。山河が手を振ってるのは、他でもない1Cの列だということを。中でも安田くんに向かって。
あの2人は、そういう関係という認識であってるか?
「山河さん、最後の受賞となりますが、心境はどうですか?」
「いや、僕なんかでいいのかなって……はは。」
「素晴らしい活躍でしたよ。」
「ありがとうございます。」
山河と会長の会話を、全校生徒が微笑ましそうに見ているが、この2人の仲は悪い。
それにみんな気付いてないのは、まあ、仕方ないといえば仕方ない。
山河が舞台から降りる時も、歓声は鳴り響いた。
これは、親衛隊が出来そうだ。
どうなのだろうか。風紀委員でも、生徒会でもない人に親衛隊というのは……
もしかして、親衛隊は作れないのではないだろうか。
作るとしたら、ファンクラブ……
どちらにしても、山河ブームが来ている。
そんなことを思っていたら、好評は風紀委員長に移っていた。
「お疲れ様です。今回のスポーツ大会では、事件、事故と何も起こらずに終えることが出来ました。嬉しい限りですね。私たち3年生にとっては、最後のスポーツ大会になります。3年生の皆さんは、しっかりと楽しめましたか?これが終われば、いよいよ受験シーズンとなっていきますね。私事でありますが、私は今日限りをもって、緑ヶ丘学園高等部風紀委員長を、引退することを決めました。少し早いですが、1年生の夢野衛に、全権を託したいと思います。ありがとうございました。」
笑顔を向けるが、会場が静まり返った。
唖然というのだろうか。
この人は何を言っているのだろうか……みんなそんな顔をしていた。
誰だろう。
誰かが叫んだ。男のはずなのに、高い声で叫んだ。
そしたら、大変だ。
ザワザワキャーキャー阿鼻叫喚と言っても語弊がないだろう。実際キャーキャー言ってる人たちは泣いているんだから。
それは、前々から誰しもが覚悟していたこと。
風紀委員長は、3年生だ。
受験生となるために、来月からは衛が後任を務める予定ではあったけど……
いきなり今日限りって……
衛は、なんやかんや周りから注目されていた。
そんな人たちに向かって、衛は黙って深々とお辞儀をした。
そんな衛を俺は黙って見ていた。
衛は、もう覚悟を決めた目をしていた。
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