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どなた?
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頭になんの異常もなかった。
朝起きたら、たん瘤が出来てた。
それが痛いだけ。
病院に行っても、特に問題はない、と言われたし、多分大丈夫。
休日に外に出かけるのがなんだか久しぶりに感じた。
大体寝てたり勉強してたりで、いつの間にか休日は過ぎている。
今日は、人との約束もあるし、朝一で病院に行きたかったので、早く起きた。
衛はまだ寝ているのか、もう出かけたかはわからないけど、隣の部屋から人が動いている気配はしなかった。
だけど、俺はなるべく誰にも気付かれないように、寮を出てきた。
学園を出るときに守衛さんに挨拶をしたくらいで、あとは誰にも会っていない。
一番近くの病院は、学園からバスで5駅くらいのところにあった。
病院に行くのは久しぶりだった。
去年の夏以来か……
病院は混んでると思ったけど、朝一でしかも平日だったからか、そこまで待たなかった。
今日は、スポーツ大会の次の日で、休息日となっている。
そして、俺は病院からまた学園に向かったが、学園のバス停の1つ手前で降りた。
これから、コンビニ向かうが、1つ前のバス停の方が都合が良かった。
コンビニが見えてくると、コンビニの駐車場に、そこに不似合いの黒塗りの高級車が停まっていた。
確認しなくても、それが俺に用がある車だとわかった。
黒塗りの車の中は、外からはわからない。
俺が近づくと、後部座席の窓が開いた。
「志真くーん。」
「……あのバカ。」
笑顔で手を振ってるけど、あいつはきっとバカだ。
目立たないようにしろって言ったのに……
まあ、あの学園の坊っちゃま方が、コンビニなんかには来ないだろうけど。
「乗って。」
俺は黒塗りの後部座席に乗り込む。
そこには、私服の山河がいた。
「おはよう。志真くん。病院どうだった?」
「特に問題はない。」
「それはなりよりだね。あ、走って。」
運転手にそう言うと、車はゆっくりと動き出した。
運転手は、メガネをかけたオールバックのスーツをきた男の人だった。優しそうな感じの人だけど、この人もきっとあっちの世界の人なんだろうな。
なってたって、山河組の組長の孫の運転手だ。そこらへんの好青年なわけない。
山河は、俺の顔をニヤニヤしながら見ていた。
「……なんだよ。」
「いや、ちゃんと来たなって。」
逃げると思われていたらしい。
確かに、今すぐにでも車から降りたい。
時速60キロで走ってる車から降りる自殺行為はしないが……
「俺に会わせたいやつは、もういるのか?」
「多分いるよ。」
多分ってなんだよ……
「あ、そろそろだけど、多分志真くんの想像通りの家だから。」
なんて笑いながら言う。
たどり着いた山河の家は、門構えが素晴らしく門から周りをぐるっと囲むような塀は、中の様子が全く見えない。
何だか、よく時代劇とかでみる家みたいだ。
運転手さんが門を開けて、車が入っていく。
俺の想像だと、お迎がいるはずなんだけど……
「お迎えは今日は、止めてもらったんだ。ガッカリした?」
キョロキョロとしてる俺を見て、笑っている山河。
こいつ……さっきの言葉も伏線か。くそ。
俺は、何も言わずにいた。
何か返すのが腹立たしい。
玄関の前で降ろしてもらい、俺は山河に続いて立派な日本家屋の中に入っていく。
「おかえりなさい!若!!」
いや、不意打ちだった。
そこには、やく5人くらいのガラのわる……ガタイのいい男の人がいた。
そして、頭を下げて山河を迎える。
本当に、若って呼ばれてるんだ……
あまりに現実味の無いことに呆然と立ち尽くす俺。
急激にこの家に入りたく無い願望が強くなった。
そんな俺を見越してか、山河が俺の腕を引っ張って無理やり中に引きずり込む。
「若。そちら例のお友達ですか。」
「そう。志真くん。」
「……はじめまして。」
「ようこそ、志真さま。ゆっくりなさってください。」
ゆっくりする気はない。
ていうか、明らかにこの人だけ雰囲気が違うんだよな。
何だろう。この人、運転手さん的なオーラがある。優しそうな感じ。だけど、経験上わかる。この人に喧嘩は売ら無い方がいい。もし、こんな人にあったら逃げるが1番だ。
俺が靴を脱いで、靴を揃えたくらいの時、廊下の向こう側から、ドタドタと音がした。
何事かと振り返った時には、その音の主が俺に向かって飛びかかってきた時だった___
「うわっ!」
俺は、その人を支えきれずに、その場に崩れ落ちる。
俺の顔に何だか長い金髪の髪がかかっていた。
その髪がなくなったと思ったら、今度は___女の人の顔が俺を覗き込んでいた。
「久しぶりね!志真くん。」
化粧バッチリで、フレアスカートと白いジャケットを着た女の人からは、ほのかに香水の匂いがして、その香水をどこかで嗅いだ気がした。
だけど、俺にこのような女の人の知り合いはいない。
「……どなたですか。」
山河がお腹を押さえて笑っていた。
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