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しのぶと志真
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志真くんとしのぶが、部屋に2人きりで入ってから、20分は過ぎようとしていた。
この家の主の孫である俺も、その空間に入ることはしない。
席を外せと言われて、こっそり盗み聞きするほど、俺は馬鹿じゃないし、モラルもある。
俺は、居間として使われているところで、2人の部屋の入り口が見えるように、座っていた。だって、何かあったら困るのは俺だし。
雑誌をパラパラと捲るが、その内容は一切頭に入ってこない。
悠里に会いたい。
なんて思いながら、ただボケーッとその場に座っていた。
なんで連休でもない今日、実家に帰って来なきゃならないかは割愛するが、しのぶが志真くんのことを知っていたのは驚いた。
GWに実家に帰った時、志真くんの話を少しだけしたら(同じ危険人物のよしみで)、しのぶが食いついてきた。
しのぶは、俺が小さい時からうちにいる医者だ。覚えてないが、俺が小さい時は、まだしのぶも高校生だったようだが、しのぶの父親と俺の父親が仲良しだったようで、しのぶの父親が抗争で亡くなった時に、しのぶはうちに引き取られて居候となった身だ。
とにかくしのぶは、昔から怖かった。
俺は、しのぶの後ろを金魚の糞のごとくついていった。
しのぶは頭が良かった。
だから、医学部に進学して、医師免許を取得した。そして……うちの専属医師になった。
俺的には、しのぶにはこちらの世界に来て欲しくはなかったのだが、しのぶは望んでこっちの世界に居座ることに決めた。
俺はそれに口を出す権限もない。
そんなしのぶが自分の秘密を暴露したのは、つい半年前だ。
しばらく外の仕事だとか言って、帰ってこなかったしのぶが、久しぶりに帰ってきたと思ったら、女の格好をしてて、しかも自分はオネエだと言う。
家の奴らはみんな驚いた。
しのぶの女姿が似合うからまた、みんな驚いた。
年明けからとんでもないことが次々と起こったが、俺は緑ヶ丘学園に入学した。
家のことなんて、正直どうでも良かった。
実際、寮で暮らすようになってから、家のことを気にして緊張することもなくなったし。唯一、雅樹うざいだけ。
たまに実家に帰ると、家の奴らから面白いことを聞いた。
『しのぶが、週末に誰にもどこに行くか知らせずに出かける。仕事関係ではなさそうだ。』
という話だ。
俺は、志真くんのこととついでに聞いてみたが、綺麗にスルーされてしまった。
志真くんの秘密の一部を知った俺は、今、あの学園をどうぶっ壊そうか計画中だ。……冗談だ。多分。
そんなこんなしてる間に、しのぶと志真くんが部屋から出てきた。
俺は、何食わぬ顔でその場で待機。
2人はこちらにやってくる。
「もう話は済んだの?」
「ああ。」
「と言っても、ほとんどあたしの世間話と恋バナで終わっちゃった。ごめんね、志真くん。付き合わせちゃって。」
「いえいえ。全然、大丈夫ですよ。」
なんだ、この砕けようは。
志真くんとしのぶの距離が縮んでる。
これじゃあ、何の意味もない。
志真くん動揺させるために連れてきたのに。
弱ってるところ突けば、ボロ出してくれると思ったのに……
俺がまだ知らない志真くんの秘密。
なんだよ。
盗み聞きすれば良かった。
志真くんの秘密は、きっと色々な人が知りたがってる。生徒会長、衛……
色々利用できると思ったのに、残念だ。
「じゃあ、山河。俺は、帰る。」
「送ってくよ。」
「いい。帰り寄りたいところがあるんだ。」
「そこまで送るよ。」
「いらん。邪魔した。」
志真くんは、俺の制止も止めずに、玄関からとっとと出て行ってしまった。
俺は、それを慌てて追いかけようとしたが、しのぶに止められた。
俺の腕を掴んだしのぶに、苦情を言おうとしたが、言えなかった。
しのぶが今までにないくらい辛そうな顔をしたから。
「ダメよ、若。志真くんは、きっとあのまま寮に帰るだけだから。」
「それなら、送ってもらえば良かっただろう。志真くんのことだから、違うとこに行く。」
「はぁ。志真くんには、辛い話をしたからね。今頃泣いてるんじゃないのかしら。」
志真くんが泣いてる?
ありえない。俺、志真くんが笑ってるところさえ見たことないのに。
というか、泣いてるなら尚更追いかけたかった。
辛い話ってなんだよ。お前の恋バナだったんだろ?……あの時についた嘘か。やだやだ。この世界のやつはすぐに嘘をつく。
あーあ。ダメだ。
……白けた。
「離せよ、しのぶ。」
低い声で言うと、しのぶは手を離した。
俺は、しのぶの顔も見ずに、自分の部屋へ行った。
一眠りしよう。
そしたら、悠里が待つあの部屋へ帰ろう。
話しはそれからだ。
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