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それぞれの夜 宮園
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「ふふふっ。」
志真が笑っているところを初めて見た気がする。
志真といえば、笑わない奴ってイメージだから、今のはかなりきた。
というか、この至近距離から、そんな顔を赤らめて可愛らしい笑顔は色々と反則だと思う。
それ以前に、この状況ってどうなんだろうか……
志真が誘ってきたとは言え、これ何もせずに寝るのは逆に拷問に近い。
だけど、志真はそういうことしたら、2度と俺と顔を合わせてくれなくなるだろう。
そもそも、こいつは俺のことを好きじゃないだろう。
「……じゃあ、志真の好きなものって何?」
好きな人って誰?
なんて質問、こいつにしたって意味ないことはわかってる。
だから、好きなものにしたんだ。
志真は、一瞬ほんの一瞬だけ、困ったような顔をしたあと、小さい声で話した。
「……睡眠。」
思わず吹き出した。
いや、だって、睡眠て……
「わ、笑わないでくださいよっ!」
「ふっ……だって、お前……睡眠って、ははははは」
睡眠とは、なかなか強敵だ。
整理現象だ。
勝ち目はまずない。
「会長は、何ですか?」
「俺か?俺は……そうだな。学園かな。」
「それは………生徒会長としては、模範解答ですね。」
嫌味か?
わりと本気で言ってるんだけと。
どうやら、志真は、俺が冗談で言っているように聞こえたらしい。
俺は、緑ヶ丘が好きだ。
昔から通っているということもあるが、あの学園の伝統を何とか守っていきたい。
俺は、この学園のたくさんの人に世話になった。見国先生もその一人だ。
色々な人の想いがあるこの学園を、俺は守る必要がある。
「会長。何考えてるのですか?」
「……お前が、俺らにとって、危険ではないとわかればいいんだが。」
俺は、志真の目を見て言った。
志真の目は、俺をしっかりととらえていた。
灰色がかった左目は、一体俺の何を見ているのだろうか。
「出来ません。今は、まだ……」
またか。
今日こそは、根掘り葉掘り聞こうと思ったけれど、隣からは規則正しい寝息が聞こえてきた。
よく見ると、もう志真は夢の中に入っていた。
また、志真には何も教えてもらえなかった。
「さすが、好きなものは、睡眠だな。」
苦笑しながら、俺は隣で眠る志真の寝顔が可愛いくて、有らぬことをしてしまいそうなのを、堪えることで精一杯だった。
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