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その17
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雨の中緑間は傘もささずにボーッと突っ立っていた。
負けた。
人事を尽くしたのに負けた。
悔しくないはずがない。
思いに浸っていた時だった。
ポケットの中で携帯が音を響かせた。
「…はい」
『あー!みどりーん、ひっさしぶりー!どーだった、試合!?勝ったー?負けたー?あのねー、こっちは、』
緑間は通話を切った。
その直後また携帯が鳴った。
「なんなのだ。いいかげんに…」
『んだよ、暗ぇな。さてはアレっしょ?負けちゃった!?』
「…青峰か。…そうだ。決勝リーグではせいぜい気をつけるのだよ。」
『はーいー?何言ってんの?キモいって!俺を倒せるやつなんざ、俺しかいねぇよ。』
緑間の電話の相手は青峰大輝。
火神を黒子の今の相棒と言うなれば、彼はかつての相棒。
次の試合、因縁めいた戦いになるだろう。
「わかっているのか?つまり決勝リーグ、黒子と戦うということなのだよ。」
『……昔はどうでも今は、敵だ。じゃな。切るぜ。』
「あぁ。」
『みどりーん!落ち込んでるときにごめんねぇー!元気だして、』
『うるせーよ!』
携帯の向こうで騒いでいるのを聞いてイラッとしながら通話終了ボタンを押した。
誠凛は少し休んでから動けない火神を黒子がおぶって、近くのお好み焼き屋に入った。
途中水たまりに火神を落とすというアクシデント付きで。
「すいませーん。」
日向が声かけしていると、どこからか犬が突進してくるような気配を感じた。
「くぅううぅrrrrrろこっちぃいいいぃいい!!!」
「っ!ストップ!」
「はいっス!」
流石の黒子もこれにはすこし怖かったようだ。
しかしさすが黄瀬。
黒子の声かけに後15センチというところで止まった。
「黄瀬と笠松!?」
「呼び捨てか、おい!?」
火神に呼び捨てにされた笠松は一喝した。
「何でここに…。」
「オタクらの試合見にね。」
先程の試合、この二人も見に来ていたのだ。
日向と笠松がしゃべっている間、伊月が店員と交渉していた。
「15人なんですけど。」
「ありゃ、お客さんちょっと多いねー。」
「詰めれば大丈夫じゃね?」
「あっちょっまっ、座るの早っ!」
小金井の行動になんと突っ込んだのは突っ込まれ役の伊月だった。
「もしあれだったら相席でもいっすよ。」
日向と話しながらも見ていた笠松が相席を許してくれ、なんとか座ることが出来た。
しかしなんともまぁ。
カオスだ。
相席したのはいいがよりによって黄瀬と笠松の隣に座ったのは火神と黒子。
黒子と火神以外の誠凛メンバーはものすごく心配そうな目で見ていた。
もちろん黒子だけを心配しているので、火神については面白がっているが。
「黒子っちと一緒なのはいいんスけどなんで火神っちも一緒なんスか。そんで火神っちはなんでドロドロだったんスか?」
「あぶれたんだよ。ドロは放っとけ。あとっち付けんな。」
とまぁバタバタとしたが無事飲み物も周り、皆がグラスを手にした。
「じゃあ、かんぱー…」
「すまっせーん。おっちゃん、2人空いて…ん?」
ガラッとドアをあけて入ってきたのは、これも運命と呼ぶべきなのか緑間と高尾。
「なんでお前らここに!?つか他は!?」
「いやぁ真ちゃんが泣き崩れてる間に先輩たちとはぐれちゃって…。」
「泣いてないのだよ!……店を変えるぞ、高尾。」
「あっおい!」
外に出た緑間達はその一秒後にびっしょりと濡れて入ってきた。
「……あれ?海常の笠松さん!?」
「なんで知ってんだ?」
「月バスで見たんで!全国でも好PGとして有名じゃないっすか!ちょっうおっ…!同じポジションとして話聞きてぇな…。ちょっとまざってもいいすか!?」
「え?てか正直今祝勝会的なムードだったんだけど…。」
「いいのいいの!さっこっちで!」
「あぁ、いいけど…。」
「あ、真ちゃんは今空いた席ね。」
「!?」
という高尾のハイスペックで緑間が席に座り、先程よりももっとカオスな席になった。
「お前これ狙ってたろ。」
「えー?まっさかー!」
笠松の問に否定した高尾だがもちろん狙っていた。
「とりあえず何か頼みませんか?お腹すきました。」
「俺もう結構お腹いっぱいなんで今食べてるもんじゃだけでいっスわ。」
「ふん。よくそんな○○みたいなものが食えるのだよ。」
「何でそんなこというんすか!?」
「豚玉イカ玉ミックス玉タコ玉豚キムチ玉…」
「なんの呪文っすか!?」
「頼みすぎなのだよ!」
「大丈夫です。火神君一人で食べますから。」
「ホントに人間っすか…?」
頼んだものの緑間は手をつけようともしなかった。
「緑間っちホラ、焦げるっすよ?」
「食べるような気分なはずないだろう。」
黄瀬が急かすが負かされた相手の横で食べろという方が無理だ。
「負けて悔しいのはわかるっスけど、ホラ!昨日の敵はなんとやらっス!」
「負かされたのはついさっきなのだよ!……むしろ、お前がヘラヘラ同席している方が理解に苦しむのだよ。一度負けた相手だろう。」
本当に理解できないと言いたげな目をする緑間に黄瀬はヘラを黒子と火神に向けた。
「そりゃあ、当然リベンジするっスよ。インターハイの舞台でね。次は負けねっスよ。」
「ハッ!望むところだよ。」
宣戦布告をしあう黄瀬と火神を見て緑間は目を細めた。
「黄瀬、前と少し変わったな。」
「そっスか?」
「目が…変なのだよ。」
「変!?」
「まぁ黒子っち達とやってから前より練習はするようになったっスかね。あと最近思うのが、海常のみんなとバスケするのがちょっと楽しいっス。」
そう言って黄瀬は笑った。
「……どうやら勘違いだったようだ。やはり変わってなどいない。戻っただけだ。三連覇する少し前にな。」
「緑間君も変わってないと思いますよ。」
黒子にそう言われて緑間は目を見開いた。
「僕の知ってる緑間君はおは朝信者で語尾になのだよをつける変わり者で、」
「………貶しているのか?」
「違います。やっぱり変わってないです。昔から話を最後まで聞いているようで聞いていないところも。それでもバスケを楽しい楽しくないでやってないなんていいながらもちゃんと人事は尽くす。運命に従おうと、頑張るんです。」
火神は驚いた。
少し頬を染めて下をむいている緑間にも驚きだが、黒子がこんなにも饒舌なのは見たことがない。
「つか、楽しい楽しくないでやってないとか、ごちゃごちゃ考えすぎなんじゃねぇの?楽しいからやってるに決まってるだろ。」
火神が言うと緑間は横目で睨んだ。
「何だと?何も知らんくせに、知ったようなことを言わないでもらおうk」
「あっ!」
いい終わったか言い終わってないかの絶妙なタイミングで緑間の頭の上にお好み焼きが降ってきた。
犯人は高尾だ。
「……とりあえずその話は後だ。高尾、ちょっとこい。」
「いや、わりーわりー。ってなんでお飲み焼き被ってんの、ギャーーーー!!」
高尾が緑間に成敗されているのを横目に黒子は口を開いた。
「火神君の言う通りです。今日試合をして思いました。つまらなかったらあんなに上手くなりません。」
黒子が微笑むと火神も黄瀬もつられて微笑んだ。
雨もやみ、お開きにしようかという話になった。
「火神、1つ忠告しておいてやるのだよ。東京にいるキセキの世代は2人。俺と、もう一人は青峰大輝という男だ。決勝リーグで当たるだろう。そして、奴はお前と同種のプレーヤーだ。」
緑間の言葉に火神は首をかしげた。
「はぁ?よくわかんねぇけど、とりあえずそいつも相当強ぇんだろ?」
黒子に問うと黒子は表情を固くした。
「………強いです。ただ、あの人のバスケは好きじゃないです。」
切なそうにいう黒子に黄瀬も眉を顰めた。
「ふん。せいぜい頑張るのだよ。」
「緑間君!……また、やりましょう。」
「…当たり前だ。次は勝つ。」
こちらもいいライバルになったようだ。
黒子は再度微笑んだ。
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