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その23
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中学2年の初夏。
黄瀬がバスケ部に入って間もなく一軍レギュラーになった頃、青峰と黄瀬はよく1on1をしていた。
もちろん勝者は決まって青峰だった。
「あーもー!もっかい!もっかいっス!」
「ははっ。甘ぇよ黄瀬。つっても始めたばっかでそんだけ動けりゃ大したもんだけどな!」
いつもそんなやりとりが繰り返され、また1on1をする。
それを当時の上級生と桃井は微笑ましげに見ていた。
「黄瀬も良くやるなー。エースの青峰相手に。つか初心者だろ?」
「えー?才能あると思いますよ?身長もあるしあの吸収力。半年もしたらすごい選手になるかも!」
「じゃあ青峰もそのセンスを買っていつも相手を?」
「え、いや…それはどうですかね?青峰君はただのバスケ馬鹿なんで…。好きだからやってるだけかな…。才能も練習量もチーム1です。でも一番の理由は、アイツがただバスケを好きなんだと思います。」
青峰はバスケが好きだった。
そして何よりもバスケを愛する黒子が好きだった。
「ナイスパス、テツ!」
何度も拳を合わせた。
他のキセキ達が羨ましいと騒ぐほどに。
「峰ちんと黒ちん息ピッタリだねー。」
「黒子っちー!俺にもパスまわして欲しいっス!」
「後で回します。でも今のは赤司君の指示です。」
「今のは青峰にパスするのが最適だっただろうからね。」
「黒子は時に影なのだよ。影は光が強いほど濃くなる。その光が最も強いのが青峰なのだろう。」
「ははっ。ホントなんでだろうなぁ!テツとは他のこと合わねぇのにバスケだけは合うんだよなぁ。」
黒子が手を出さなくても影でいられるほど強かったのは青峰だ。
そして元々強かった彼は更に力をつけてしまった。
緑間も黄瀬も、そして他のキセキ達も最初から並外れていたわけではなかった。
1、2年生の頃は周囲より少し優れた選手。
その程度だった。
ただ、青峰が一番早く、そして突然開花した。
ある日の試合で一人で何十点もとってしまう。
最初は楽しかった。
が、いつからかそれが怖くなって、面白くなくなった。
好きだったバスケをつまらないと感じ始めたのだ。
次第に青峰は練習をサボるようになった。
ある日の放課後、2人でコンビニに寄りつつ帰り道を共にしていた。
「ほらよ。」
「ありがとうございます。」
手渡されたアイスを袋から出して一口齧ってから黒子は本題に入った。
「青峰君、最近練習来なくなりましたね。」
「あー、いいんだよ。練習したら上手くなっちまうだろ。頑張ったら頑張った分だけバスケがつまんなくなってくんだよ。それに…俺の欲しいもんはもう…。バスケなんてとどのつまり遊びだしな。これからも適当に流して…」
「それはだめです。」
「ほわぁ!!!」
青峰が叫ぶのは無理もない。
何故なら黒子が青峰の背にアイスを入れたのだから。
「僕は体力がないからみんなについていくのに精一杯です。だから正直青峰君の感覚はわかりません。けど、手加減されたり手を抜かれるのは僕だったら絶対して欲しくないです。それに、青峰君よりすごい人なんてすぐ現れますよ。」
そう言って目を見開いている青峰をおいて黒子は階段を降りていった。
「……ははっ」
青峰は少し元気を取り戻し彼を追いかけた。
黒子の言葉に救われた青峰は次の試合、集中力を利らせることをしなかった。
点を決められるのはやはり嬉しく、その上その日の相手は青峰を今までに何度も止めてきた相手。
しかし。
黒子からパスをもらった青峰は立ちはだかるディフェンスを抜き去ろうとした。
もちろん抜けた。
だがそれは、相手が止めに来なかったからだ。
いや、止めに来ても抜けただろうが相手がやる気をなくしてしまったのだ。
バスケが好きで好きでたまらない青峰にとってそれは苦でしかない。
「………テツ。」
呼ばれた黒子はまた拳を合わせるのかと手を挙げた。
が。
「お前の言ったことは間違ってねぇと思う。けどやっぱ…ダメだわ。……なんか気づいちまった。俺の欲しいもんは絶対見つかんねぇ。」
誰が来ようと負けたくない気持ちから『負けられなくなってしまった』。
「俺に勝てるのは、俺だけだ。」
黒子はその夏の全中、ある出来事を機に帝光中バスケ部を退部することとなった。
それが、歯車を狂わせてしまった。
「黒子!!」
「黒ちん!」
「テツ!」
「黒子!」
「黒子っち!!!」
その声を最後に聞いた事だけを覚えていて、目が覚めればそこは……。
「黒子?」
「っ。すみません。………夏の全中に圧勝してから他のキセキ達も次第に開花していきました。そして僕は……3年の全中の後、ある出来事をきっかけに帝光バスケ部を辞めました。」
話を聞き終えた火神はまだ隠されていることは沢山あると感じたが敢えて聞きはしなかった。
「…ふーん。まぁひとこと言わせてもらえれば、調子のんなボケぇ!ってぐれーだわ。強くなりすぎてつまんなくなった?俺に勝てるのは俺だけ?『キセキの世代』はそんなんばっかか!ヘソでコーヒー沸くぜ!」
「お茶です。」
「手、出せ。」
火神に言われて拳を突き出す。
その拳に火神の拳が合わさる。
「さくっと勝って、目ぇ覚ましてやらァ。」
この時は思いもしなかった。
あんなことが起こるなんて。
火神が今とった行動が吉と出るのか、凶と出るのか。
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