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その27
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火神の抜けた穴は大きかった、と言いたいところだが実際にはそんなに苦ではなかった。
どれもこれも黒子のおかげだ。
しかも2点差まで詰めていた。
流石に桃井もお手挙げ状態だ。
青峰がいない今は。
「出来たわ!とりあえずこの試合はこれで問題ないはず。行っていいわよ!」
「っし!サンキュです。」
体を冷やさないよう来ていたトレーナーを脱いでいると、リコが小さな声で言った。
「………すまないわね。本当は万全でない選手を出すなんてやりたくないけど、火神君がいないと黒子君だけに負担かけてしまうわ。…全く全員一丸のスタイルじゃないことわかってる。…私の力はまだ未完成でみんなの力を引き出せないわ。挙句、怪我をしている火神君に頼る始末…。自分の無力さに腹が立つわ…!」
グッと唇を噛むリコに火神は眉をしかめた。
「えっと……誰?」
「は?」
「練習メニュー作ってスカウティングして、ベンチで指示出して、マッサージにテーピング…むしろ仕事しすぎ。ドーーンと構えてくんねぇと!つかそもそも「すまない」で送り出されてもテンション上がんねぇから、です。」
火神なりの励ましなのだろうか。
リコは何かが吹っ切れたような気がした。
「…生意気言ってくれるわね!行ってこい!」
「ウス!」
「そうそう。張り切ってくれよ。少しでも俺を楽しませられるようにな。」
メンバーチェンジしようとした時だった。
火神の肩に手を回された。
相手は青峰。
「テメェ、青峰!」
会場がわっと盛り上がり誠凛は皆目を見開いた。
「やっと来たか!はよ準備して出てくれや!」
今吉の発言に時間を見た青峰はゲッと顔をしかめた。
残り1分きっているのだから。
「負けそうだけどさもうちょい粘ってくれよ。後半からでいいじゃん。」
「ダメです。出なさい。」
相手校の監督、原澤の言葉に彼はため息をついた。
「ま、いいけど。じゃあ、ま…やろうか。」
ジャージを脱ぎながら青峰は言った。
役者は揃った。
「久しぶりだな、テツ。もう一生無縁かと思っちまったぜ。 」
「僕も思っていましたよ。入学するまでは。」
「………………もういいのかよ?」
「何がですか? 」
「っ何でもねぇよ。」
地黒でわかりにくいが青峰は今照れている。
それもつかの間、直ぐに好戦的な目を向けてきた。
「とりあえず今は言っちゃ悪ぃがテツ止めたら一発で終わる気がすっけどな。そうならねぇようにせいぜい頑張ってくれよ?火神大我。」
「やってやらー!直ぐに見せてやる。」
試合再開のホイッスルがなった。
桐皇ボールで再開したのだが、いきなりアイソレーションを使ってきた。
アイソレーション。
オフェンスの戦法の一つであり、特定のプレイヤーがスペースを使いやすいように片側に寄る事。
そしてボールを持っているのは青峰、彼をマークしているのが火神。
つまり、両エースの1on1ということ。
青峰はレッグスルーを使ってきた、かと思いきやクロスオーバーをしたのだ。
しかし『たったそれだけ』なのだ。
それだけで火神を抜いてしまった。
動きが早すぎて人間技とは思えない。
そしてダンクを決められるかとヒヤヒヤしたが、その差を詰めていた火神がそれを阻止した。
さすがの青峰も意表を突かれたようだ。
「あん!?」
あのロールの一瞬で追いついたというのだから対したものだ。
そのままマイボールにして速攻で攻めたつもりだが、誠凛ゴールの前には既に桐皇の選手が戻っていた。
「んなトロい速攻、一昨日きやがれボケぇ!」
若松が威勢よく叫ぶがボールは黒子のイグナイトパスによって火神の手に渡った。
そのままダンクを決めるつもりだったがそれは青峰によって阻止された。
ゴールしたから一気に攻めてきたのかと思うとゾッとする。
第2Q終了のブザーがなった。
「あり?終わり?あー、アップがてらサクッと一本決めるつもりだったのに…何だよそれ。ったく。いいじゃねぇか、オイ!うちのチームに負けてるから俺を楽しませらんねぇんじゃねぇかと思ってたけど、なかなかマシじゃねぇの?」
先程より楽しそうに笑う青峰。
火神はまさかと思い、隣にいる黒子を見た。
「火神君が言いたいことはわかります。青峰君は力の半分も出してないです。」
誠凛メンバーは息を呑んだ。
聞こえてきた会話が何よりの証拠だった。
「青峰テメェ、本気でやれよ!あっさりブロックとかされやがって!」
「は?はっはー。本気とかないわ。だるいし。」
「テメェっ!」
「けどまぁ、後半は出すかも。本気。」
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