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『なんだよ?』
『別に…』
布団の中に潜りながらボソボソと健太郎が呟く。
暫く沈黙が続き、健太郎が口を開いた。
『あのさ…』
『なに?』
『お前は、やっぱり女が好きなのか?』
『は?』
『いや、だから…女が好きかって聞いてんの。』
『そ、そりゃ…まぁ…』
『やっぱ男と付き合ったり、キスしたりするのって抵抗ある?』
キ…キス……
いや、昨日散々してたけど…
なんてことは言えるわけもなく、俺は笑いながら健太郎につっこむ。
『あ、当たり前だろう?』
『そっか…』
『なんだよ。』
『いや、本当に俺じゃダメか?』
『ダメかって言われても…』
この前告白された時も思ったけど、健太郎のことは嫌いじゃない。
いや、むしろ好きだ。
好きなんだけど…
友情止まりというかなんというか…
キスをしたり…
なんてことは、とてもじゃないけど想像できなくて…。
気がつくと、いつの間にか布団から顔を出した健太郎が俺を見つめていた。
『な…なんだよ?』
『ちょっとだけ試してみねぇ?』
『はぁ?何を?』
首を傾げる俺を、健太郎が手招きする。
『ん?』
椅子から立ち上がりベッドに寝転ぶ健太郎に近付いた。
『うわっ!!』
急に上半身だけ起こした健太郎に腕を引かれ、後頭部を固定されるなり唇を塞がれた。
『んー!!!』
何がなんだかわからなくて、必死に健太郎を押し退けようと胸を押す。
しかし、宅配業で鍛えられた腕っ節に敵うわけはなく、健太郎はビクともせず、後頭部を固定する手にもっと力が入る。
『んっ…』
顔の角度を変え、器用に進入してきた健太郎の舌に巧みに舌を絡め取られ、思わず甘い声が漏れた。
やべ…
こいつキスうめぇ…
なんてバカなことを考えながら自らも舌を絡める。
『んっ…ふ…』
溶けてしまいそうなほど気持ちがいい健太郎のキスに、思わず目を閉じ感じてしまっていたが、ここが病院で、健太郎の姉ちゃんが帰ってくることをふと思い出し、健太郎の胸を叩いた。
『ん?なに?』
『ん…ハァ…ここ病院。』
『わかってるけど?』
『いや、わかって…』
『遅くなったー!!!スプーン探すのに手間取った!!』
ガラリと勢いよく扉を開け、里奈が入ってきた。
『おっ、あっ、ありがと!!!』
『ん?亮太どうしたの?赤い顔して。』
『えっ?あっ、えっ?なに?顔赤い?あっ…そう言えばちょっと熱っぽいかも。俺、帰るわ。』
そう言うなり、俺は2人に手を振りながら病室を後にした。
俺ほんと何やってんだよ…
隙がありすぎんのかな?
『あーーーー!!!!』
自分の行動に腹が立ち、頭を掻き毟りながら病院を後にした。
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