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《新たな場所へ》5
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「そこで、一生忘れられない光景を見たんだ…」
「ルキ先輩は?」
溜めて話すフミヒコに…
急かしてしまう…
「ルキは、窓硝子の破片の中…血まみれで倒れていた…身体中傷だらけで、頭から血を流し…その血は床や布団、カーテンまで、赤く擦れたように付着していた…一瞬、生きていないのかと思ったよ、それくらいの惨状だった…」
「……」
「ルキの自傷は激しくなると、発作的でその間の記憶はなく意識を失うまで止まらなかったそうだ…それを再発させてしまったんだ。結果、ルキは全身に浅い傷と頭には10針以上縫うケガを負ってしまった…」
「……」
初めて聞くルキの話を、驚きながらも聞きいる…
「ルキは、病院で目覚めてから、ずっと私に謝り続けていた…泣きながら、迷惑をかけたことを…。いたたまれなかったよ…ルキ自身も自傷行為は治ったと思っていたんだ…結局、私はルキのつらい記憶を蘇らせ心身とも傷つけて…ルキの平穏を崩しただけだった」
息をつき続ける…
「…もう、これ以上自分の元へ縛りつけてはおけない、そう思ったんだ…ルキには誠意を持って謝り、そしてBOUSに戻した…今は元気に、誰よりも働いているだろう?」
「…確かに、」
ルキ先輩は朝から晩遅くまで撮影や雑用、電話番までしてよく働いている…
「仕事をこなすことでルキは自分が必要とされていることを実感しているからね…他の助手たちも、ルキの内面を知った上でうまく接している…いい場所だよ、BOUSは…個性は強いが、根本的な面で皆が助け合って生きて行ける環境があるから…」
「……うん」
確かに助手たちにタツのような悪い奴はいない…
「だから私は、そういう意味でもBOUSが好きなんだよ…」
「……」
「そのBOUSを卒業した性優たちが社会に順応できるまで、私が悩みをきいたり助けていけたら…と、純粋に思っているんだ…」
紳士的な優しい微笑みは…アキラだけに向けられ…
なんとなく好感を持ってしまう…
「だから、君を無理矢理、ここへ縛りつけたりしない…本当に嫌であれば傷つく前に教えてくれ…ルキの時のような苦い思いはしたくないからね…」
そう話をしめくくるフミヒコ…
「うん…あんたのこと、少し誤解してた…もっと、傲慢な奴だと思ってたから…」
「はは…傲慢ではあるさ、金の力にものをいわせているのも確かだからね…」
また一口ワインを飲み、苦笑いする…
「…こんな使い方するなんて…大胆っていうか…」
アキラも首をかしげ微笑む…
縛らないという言葉はアキラの気分を軽くする…
いつでも関係を切ることができるのはありがたい…
「私はね…父が資産家で次男だった為、自由奔放に甘やかされて育った…だからね、苦労をしていない分、君達の背負う苦労を分からないんだ…けれど、だからこそ君達の話しを聞いて知っておきたいと思う…自分に足りないものを発見できるからね」
優しい声色で自分のことを話す…
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