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《温泉へ行こう》31
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「…人間って不便な生き物だよな」
アキラは近くの桜の樹の幹に触れながら呟くように言う。
「そうだな、けれど感情があるからこそ、人を愛することもできるし、大切にしたいと思えるから…必要だと俺は思う」
辛いことや悲しみ怒りも感じてしまうけれど…それから学ぶこともある筈だから…
「ふ…相変わらず、恥ずかしいセリフさらっと言うよな…」
アキラはくすくす笑ってつっこむ…
「えっ」
もとより会話は苦手分野なので、あまり考えず思う事を伝えていたみずき…
そんな恥ずかしいことを言っただろうか…と慌てて思い返してしまう。
アキラはそんなみずきを面白がりながら…
「でも、そうだよな…感情って厄介だけど、ないと困るよ、こんな綺麗なさくら見て…何も感じれないなんてつまらないからな…」
微かに散る桜の花びらの中で…アキラは空を見上げ手をのばし囁く…
「あぁ…」
頷くみずきだが、思わず、アキラの方が何倍も綺麗に見える。
などと言ってしまいそうになるくらい…
満開の桜の樹の綺麗さもみずきにとってはアキラの引き立て役にしか見えない…
そんなことを言ったらまた恥ずかしい奴、と言われそうで今度は言いとどまるみずき。
「…アキラ」
かわりに、そっと呼んでみる。
「ん?」
視線をみずきの方へ向けるアキラ。
「…手を繋いでも、いいか?」
遠慮がちに聞いてみる。
「ふっ…どーぞ!」
またクスっと笑って手を差しのべるアキラ。
「ありがとう」
アキラの手をとり微笑むみずき。
「礼言うコトか?」
首を傾げてみるアキラ…
「あぁ、アキラと手が繋げて幸せだから…」
本心からの言葉…
「単純なヤツ…」
手を繋いだくらいで喜んで…
悪い気はしないけれど、アキラはみずきの手を柔らかく握り返しながら思う。
(好かれているうちが華だよな…)
「…こうして、自然の中を歩くのも…いいものだな」
アキラの言葉に苦笑いして、話し掛けるみずき…
「うん、空気が澄んでるから…気分がいい、身体が軽く感じる…」
頷いて隣を歩くみずきと瞳をあわせて伝えるアキラ。
「そうか、よかった…」
「自然って癒しの効果があるからな…」
「また…一緒に来よう…」
静かに瞳を見つめ伝えるみずき…
その視線をあわせたまま…アキラは答えに戸惑っていると…
「…っ!」
フラッと不意に体勢を崩すアキラ。
「アキラっ!?」
驚いてすぐ肩を支えるみずき…
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