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あいあむひーろー(黒研)
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おれは別に、ゲームの主人公になりたいとかそんな願望を抱いているわけじゃない。
誰かを守るために旅に出るとか剣を取るとか、そんな甲斐性も勇気も行動力も欠片だって持ち合わせてないし、欲しいと思ったこともない。
ヒーローが一人居れば物語は成立するわけで、それが近くにいれば近い程自分はモブで良いと思う。
「研磨!」
おれの場合、それは幼馴染としてずっとずっと傍にいるから尚の事。
「また没頭してただろ!夜までやる時は先に電気つけとけってあれだけ…」
「眩しい」
「もう20時だ。ほら晩飯食うぞ」
「何で来たの」
「明日まで一人で留守番だって言ったのはお前だろ」
「…覚えてたんだ」
「この短期間で忘れるかっての」
まあ、当の本人はヒーローっていうより悪役とかライバルの方が似合う感じの食えない性格だけど。
「晩飯何か買ってあるのか?」
「確か冷凍食品はいくつか買っておいたって言ってた気がするけど」
「じゃあ問題ねぇな」
その側近とかにはリエーフとか、居るだけで存在感あるような…一言でキャラが濃いって言える人がつくべきだし。
誰かクロの暴走を止める人が必要なら夜久さんとか適任だと思うし。
「え、クロも食べてくの?」
「俺は自分で買ってきたもん食うから気にすんな」
「いや、そうじゃなくて」
「お前がちゃんと飯食って宿題やって寝るのを見届けてから帰る」
「何それお母さん…」
「お前の素行が悪いからデス」
ただ、クロはおれを放っておくつもりはないらしい。
何かと世話を焼いてくれるどころか、おれのことを大事にしすぎてる節がある。
おれに、それだけの価値があるって信じてる。
ほんとは、そんなものないのに。
おれは、チームの心臓なんだって。
おれに、存在意義を与えようとしてくる。
それがさも当然のようにクロはおれを隣に置く。おれは影になろうとするのに、クロは自分の光でおれまで照らしてしまう。
それがクロの望みだって言うなら逆らわないけど。
「冷凍庫ハンバーグとグラタン入ってんな、どっちが良い?」
「ハンバーグ…」
「米は?」
「あっためるだけのやつがあるはず」
うちの家電も慣れた手つきで使うし食糧庫の場所だってわかってる。クロ曰く第二の実家らしい。
ずっと、ずっと一緒にいた。
これから先は、分からない。
クロが卒業したら、離れてしまうかもしれない。
それはおれが決めることじゃないし、クロが離れるっていうならおれに拒否権はない。
中学から高校に上がる時は、一年間学校は離れたけど相変わらずクロとは練習してたから毎日会ってるのと変わらなかった。
でも、もし来年クロが一人暮らしするって言ったら。
遠くに、行ってしまったら。
「どした?冷めるぞ?」
「ん…何でもない。」
その時おれは、ただのモブキャラに戻るだけなんだろうか。
それだけで済む?
クロの傍を離れて、生きていける?
「嫌だなぁ…」
「…?何が?」
「…んーん。気にしないで」
きっともうおれのゲームはクロのルールで書き換えられてる。
クリア画面は到底想像できないけど、とりあえずクロにはハッピーエンドを用意してて欲しいと願ってる。
fin.
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