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放っておけない!(影菅)
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どうして、こんなに絆されてしまったんだろう。
「…?どうしたんスか。何か嫌なことでもありました?」
この、二つも年下の、しかも同性に。
「…てんで不如意だ…」
「ふにょい?って何ですか?」
「自分で辞書引け影山。お前のためだ」
つい溜息を漏らしてしまったのを、この目敏い後輩がスルーしてくれる筈もない。
「俺なんかしました?」
自分のこと言われてるって気付いてるんだろう。眉間にじっと皺が寄る。
「べーつーにー」
その眉間をぱちん。と、でこピンする。
あだっと小さな悲鳴が聞こえてきたのを無視して机に突っ伏すと、背中にのしり。重たい身体が乗ってきた。
「かーげーやーまー。重い」
「…菅原さんの機嫌が直るまで離れないっス」
「子供か。」
最近影山は休みの日にうちに居座るようになった。俺は受験生だって言ってるのに。学校じゃ俺に触れないって拗ねるから、つい甘やかしてしまった結果。
「お前自分の課題はー?」
「…終わりました」
「すぐバレる嘘つくなって。今日英語のテキスト一回も開いてねぇべ」
「…ちゃんと俺の方見ててくれたんだ」
「調子乗んなよ」
勉強しないんだったら追い出すから。
そう無理矢理約束させて、家に来ることを許した。
最大限の譲歩のような言い方をしたけれど、まあ半分以上は自分の自制のため。
けれどそれはこっちの話であって影山に言うべきことじゃない(言ったら多分余計に調子乗る)。
俺だって、このぴっとり寄り添うこいつの温もりに、癒されてないわけではない。
「でもそれじゃダメなんだよ」
「…?」
「俺の自己満足じゃダメなんだ」
突っ伏した腕に閉じ込められた声が、自分の耳に低く届く。それがやけに深刻味を帯びていて、余計にテンションを下げていく。
「…菅原さんは頭良いから」
「は?」
「悩みすぎなんすよ」
とりわけ近くから声がすると思ったら、耳にふわり、ぬくい感触がして、直後にちゅっと軽い音を残して離れていった。
瞬間、されたことがわかって、耳までぶわっと熱が上がる。
「…っげやまぁ…!」
「こっち見てくれないからです」
思わず振り返った、鼻先2cmの距離に影山の顔があって
「、ぁ…」
「好きです。」
「ッんぅ」
今度は、唇に柔らかい感触が掠めていった。
「お前なぁ!」
「一緒に居る時間くらい、大事にさせてください」
「っ…」
じっと、強い眼差しに見つめられる。いつも暴力的なくらい相手を圧倒する目。それが、俺を見る時には熱い燻りを揺らめかせることに気付いてしまえば、もう俺の負けは決まりだ。
「…はー…」
「!?溜息吐くほど嫌ですか」
「いや、なんかもうどのレベルで諦めるかってだけの問題な気がしてきた」
「…?諦めたら試合終了だって田中さんが」
「田中の言うことは気にすんな。それもどっかからの受け売りだろうが」
結局こうなってしまえば自分の自制などどこ吹く風。多少足掻いたところで無駄なのかもしれない、と諦めざるを得ない。
「とりあえず明日の予習くらい終わらせろ。まったりすんのはそっからな」
「!…おっす」
不機嫌な顔以外は分かりにくいが、それでも顔がワントーン明るくなる。入部当初はこうも懐かれるとは本当に思いもよらなかった。
なんだかんだ可愛い…可愛い後輩。
「終わったやつ見るからな。手ぇ抜くなよ」
「げっ」
絆されてしまったからにはもう、手遅れなのかもしれない。
fin.
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