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You are my princess!(黄二)
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はっきり言って最初は、怖い先輩だった。
何というか雰囲気がチャラい上に、3年の先輩にも歯向かいまくるし、1年にもよくからんでくるし、他校生にも喧嘩を売りまくる。
中学の時に割と真面目な先輩に囲まれて生活してきた俺にとって、スポーツマンシップの欠片も見せない先輩がどうしてバレーなんてチーム競技やってるのかが分からなかった。
確かに、練習は割と真面目に出てるし、プレーしてる間は素直にカッコいいと思えた。
けど一旦口を開けばやっぱり怖い。
ボール拾いから始めた部活でやっとコートを使った練習に混ぜてもらえるようになってからも、なるべく近付きたくなかった。
二口先輩。
それが変わったのは、インハイ予選の後だった。
偶然見てしまった、部室に一人佇む二口先輩の姿。
今までずっと三年生が私物を持ち込んでいた場所から次々と物がなくなっていって、少しだけ広くなったのを、微動だにせずじっと見つめていた。
声を掛ける勇気はなかった。
ただ、その顔が悔しそうな、切ない苦しさで染まっているのを、確かに見てしまった。
だから、茂庭先輩の後を引き継いでキャプテンに就いたのが二口先輩だったことに1年はざわついたけれど、俺は驚かなかった。
寧ろ、ああ茂庭先輩は分かってたんだな、という思いすらあった。
ひたすら強くなろうとする二口先輩は、ただ格好良かった。
それ以上に、綺麗だ、とすら思った。
気が付くと、先輩の姿を目で追っている自分がいた。
どうしてこんなに見惚れてしまうのか分からなかった。
それでも、ただバカみたいに一心に、この先輩は自分が支えなければと思った。
何故か、そうしないとこの人は影で泣いてしまうような気がした、だから。
「っだから上に飛べっつってんだろ黄金!!」
「ハイッ!!!」
「腕伸ばせボールに持ってかれてんじゃねえ!」
…まあ、今でも怖いとこは変わってないんだけど。それでも
「よっし上出来!今の感触忘れんなっ」
「う、ウッス!!」
この人のこのニヤッとした笑みは、絶対に俺が守る。
そのために、俺も強くならなきゃ。
もっともっと強くなって、この人の実力がフルに発揮できるように。俺がもっと、その上を引き出せるように。
「っ…黄金ニヤニヤしてんじゃねぇよ!次スパイク練するんだからお前がもたもたすんな!」
「ッス!!」
そして、いつか。
最高の舞台で、最高の笑顔を見せる先輩を、この目に映すために。
fin.
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