アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
愛のデート券 32
-
武藤がパスをして、篠原がゴールを決める。
完璧なコンビネーションだ。
でも…
「おっと!!またしても橘賢太が決めましたーッ!!!」
橘のほうがゴールを決めている。
橘のほうが…上手い。
だけど、おかしい。
篠原だって上手いのに…
こんなもんじゃないのに…
「健と篠原やばいな…」
「そう、だね…」
これは、本当に橘とのデートを考えないといけないかもしれない…
ピピッー!!!
前半終了の笛が鳴る。
点数は、46:32で1年A組が勝っている。
このままじゃダメだ…
このままじゃ…
「お、おい!!夕貴!!どこ行くんだよ!!」
俺はいても経ってもいられなくなって、篠原のもとに向かった。
篠原のもとに行くと、疲れているのか、肩で息をしながら、スポーツドリンクを飲んでいた。
「あ…」
そして、俺に気づいた篠原が、スポーツドリンクをベンチの上に置いて。
俺のところに駆け寄ってきた。
「どうしたんですか??」
「なんだよ、あれ…」
「え??」
「なんなんだよ、あのプレーはッ!!」
「せん、ぱい…??」
こんなことを言いたいわけじゃない。
ただ、”がんばれ”って言いたいだけなのに。
励ましたいだけなのに。
いざ、篠原を目の前にすると、本音が出てしまう。
もう止められない。止まらない。
「俺に…橘とデートしろって言ってんのかよ…」
「っ!!そ、そんなわけないじゃないですか!!」
「じゃあ、なんで!!なんで…」
「先輩…」
篠原の胸にしがみついて。
こんな惨めな顔を見せたくなくて、俯く。
「まだしたことないのに…。篠原とデートらしいことしたことないのに…。」
「っ…」
「いやだ…。橘とデートなんて…いや、っ!?」
「先輩ッ…」
力強くて温かい腕に。
少し汗の香りが混じった爽やかな香水に。
俺は包まれていた。
「俺だっていやです…。あんたが他の男とデートしてるのを見るなんて…。いやですッ…。」
ギリッと。
歯を食いしばる音が耳元で聞こえる。
まだ諦めてない。
篠原はまだ諦めてないんだ。
俺は、体を離して。
まっすぐ篠原を見た。
「先輩…??」
「がんばって。」
「え…??」
「後半、がんばって。勝って。それで…俺とデートしてください。」
「っ…」
俯いて、首を縦に何度も振って。
「うん。約束する…。」
小さく、それでも力強い声で篠原はそう言った。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
32 / 117