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夏休み前の静けさ 02
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はぁ…
孝太のやつ…
昼休みになると孝太はすぐに俺をドアの前まで引っ張り。
教室の外に出して、悪魔の微笑みを浮かべながら教室のドアを閉めた。
おまけに鍵まで。
そして、教室から出された俺は、前もって篠原にメールをしていたので、篠原のクラスまで行っている。
1年の教室に行くのは久しぶりだ。
文化祭以来だろうか。
昼休みということで、教室も、そして廊下も生徒で溢れかえっている。
そして、1年E組までの廊下を歩いていると、篠原を見つけた。
「しのは、」
声をかけようとしたところで、喉に何かが詰まって、言葉が出なくなった。
あながち、孝太が言っていたことは間違いではないのかもしれない…
「あ、あの…僕、クラスマッチで活躍してる篠原くんを見て、気になって…。それで…だから…い、一緒にご飯食べませんか!?」
小柄で童顔でかわいらしい男の子が篠原の制服を軽く摘んで引っ張りながら。
顔を真っ赤にして、伝えている。
こんな光景、見たくない。
見たくないのに、体が動かない。
逃げたいのに、体が動かない。
「っ…」
「あれ??夕貴先輩??」
びっくりして、バッと振り向くと…
「む、とう…」
武藤が袋をぶら下げてポケットに手を突っ込んでだるそうに立っていた。
購買からちょうど帰ってきたところだろうか。
「何してんすか??こんなところで。」
「い、いや…」
「あ、柊に用事??」
「っ…」
何を話したらいいのか。
もうわからない。
頭が働かない。
「夕貴先輩??あの…顔色悪いんすけど、大丈夫ですか??」
武藤の手が俺の頬に触れる。
そのとき、ビクッと肩が跳ねた。
「夕貴先輩??」
「おい、なに人のものに手出してんだよ。」
「え…??」
グイッと。
腕を後ろに引っ張られて。
よろけてしまった俺は、誰かの胸に体を預けてしまった。
顔を上げると、やっぱり篠原で。
篠原の顔を見ると、さっきの光景が脳裏に浮かんで。
俺は俯いてギュッと目を瞑った。
「別に手出してねーよ。ただ、顔色悪かったから心配してただけ。」
「え??」
武藤の言葉に篠原は驚いて。
俺の顔を覗きこむ。
み、見るなよ…
そう思いながら、瞑った目をさらにギュッと強く瞑った。
「ホント、顔色悪いですね。」
「……。」
「あの…先輩、目を開けてください。」
「い、いやだ。」
「なんで??」
「なんでって…」
「先輩。」
「絶対いやだッ…」
「はぁ…」と。
ため息が聞こえる。
目を瞑ってて、顔が見えないから、どういう表情をしているのかわからなくて、不安になる。
あの、さっきのかわいい子のところに行くんじゃないかって…
「健、俺昼は、」
「あぁ。わかってる。俺、他のやつと食べるから。」
武藤の足音が遠のいていくのが聞こえる。
もう教室に行ったのだろう。
長い沈黙が続く。
周りのザワザワした声がとても大きく聞こえる。
「なぁ、あの2人って…」
「それじゃあ、付き合ってるって噂は本当なのか!?」
「まじかよー。俺、会長が好きでこの高校に入ったのにー…」
そんな周りの声が嫌でも耳に入ってくる。
篠原も、聞こえてくるのか、またグイッと俺の腕を引っ張って。
「先輩、とにかくここじゃ目立つので。とりあえず行きますよ。」
「ちょ、ちょっと!!」
目を瞑ったまま。
篠原に手を引かれて歩き出す。
「あ、危ないだろ!!」
「じゃあ、目開ければ??」
「っ…」
俺は、仕方なく。
俯いたまま、うっすらと目を開けた。
それを見た篠原はふっと笑う。
「わ、笑うなッ!!」
「はいはい。」
それでも、篠原の肩は震えていて。
まだ笑っているのかよ…
そう思いながら、篠原の手に引かれながら、篠原の大きな背中を見ながら。
いつもの場所に向かった。
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